お飾りポジションを卒業して、女性リーダーを増やそう

企業においても、ラジオ番組に出演する前、私が懸念したように、「女性としての意見」は求められるけれど、実際の権限は与えてもらえないという場合もあると思います。これからは、そういった“お飾り”ポジションを脱していく段階。会議に呼ばれたとき、「お飾りポジションなら拒否します」と言うのは怖いかもしれませんが、「私以外に女性はいるんですか。LGBTの人はいるんですか」と質問をする。あるいは、文句を言いつつ参加したり、登壇したあとに嫌味の一つも言ってやるとか(笑)。そういうことを言う人が自分だけでなく、もう1人、2人でも一緒に声を上げてくるようになれば、状況はまったくちがってくると思います。

富永先生
撮影=プレジデント ウーマン編集部

また、職場の中でリーダーのポジションを得たとき、「女性管理職を増やすという目標のために昇進させてもらえたのかもしれない」「女性役員枠、ダイバーシティ枠で採用された」と感じることもあるかもしれません。そういう自虐に逃げたくなることって誰でもある、でもそれを、あえて言わないことが大事なのだと思います。

ラジオで「すみません」を取り下げたのにはそういう気持ちもありました。自分ではどうしようもない構造的な理由によって男女の格差が生じている。これは自分の責任ではないのだから、ここで自分が謝ったりしたらいけないんだと感じました。それを貫くのはすごく勇気がいるけれど、謝らないし申し訳ないとも思わない。このスタンスがとても大事だと思います。

謝ったらこれまでの積み上げが元に戻ってしまう

私は20代の頃、かなり年上の先輩に「私たちがどんどん社会に出ていくことが後輩の女性のためになる」と言われ、そのときは正直、ピンと来ませんでした。その先輩は「謝ったら(これまで積み上げてきたものが)巻き戻ってしまう」ともおっしゃっていて、30代になった今は、それがある程度真実で、こう言うと恩着せがましくてあまり好きではないのですが、下の世代のためにもなるんだろうと思います。

女性管理職を増やしてほしいと要望するなど、最初のステップで「“わがまま”を言った」結果、主張したことが実現したら、次のステップとしては「謝らない」ということが大事になってきます。だって、先に立場と権利を確保した男性たちは、そのことを当然と思い、謝ってなんかいないのですから。私たちも、せっかく得た権利を手放す必要はない。これまで先人が積み上げてきたものを巻き戻してはいけない、そんなふうに現在は考えています。

構成=小田慶子

富永 京子(とみなが・きょうこ)
立命館大学産業社会学部准教授、シノドス国際社会動向研究所理事

1986年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科修士課程・博士課程修了後、日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、2015年より現職。専攻は社会運動論・国際社会学。
著書に『みんなの「わがまま」入門』『社会運動と若者』『社会運動のサブカルチャー化』がある。