そもそも男性と女性ではリスクに対する受容度が違うといわれています。男性のほうがリスクの高い行動に出やすいのに対し、女性はより安全を重んじるところがあるので、リスクに対してきちんと予防行動を取る必要性がわかっている。その姿勢が信頼につながるわけです。

ニュージーランドのアーダーン首相は40歳の若いリーダーですが、地に足の着いた方で強い信念を持っています。非常に親しみやすく、「私はあなたの隣にいて、あなたのことを応援している」というメッセージを発信してきました。いわば隣のお姉さん的な包容力があり、悲しみや喜びを一緒に共有していこうという姿が共感されるのでしょう。

自身も母親であり、家で子どもを寝かしつけた後、部屋着姿のままライブ中継でメッセージを送り、国民を励まし続けている。頻繁に国民とコミュニケーションを取ることの重要性もわかっているのですね。

日本の政界では東京都知事の小池百合子さんの「コミュ力」が際立っています。言葉の選び方、場のさばき方などさまざまな工夫が凝らされ、キャッチフレーズのつくり方もうまい。何より彼女のコミュニケーションで舌を巻くのは、徹底した感情のコントロール。声を荒らげたり、取り乱したりすることがない。ヒステリックに怒って聞こえてしまうという、女性特有のトラップ(わな)をわかっているのでしょう。

各国の女性リーダーを見ていると、強さとやさしさのベストミックスを感じます。世界でもっとも早く対応したリーダーの1人、台湾の蔡英文総統は冷静でロジカルな方ですが、冷たさはありません。ノルウェーのソールバルグ首相も揺るぎない強さがあり、国のお母さんという感じ。テレビを通じて子どもたちに直接語りかけるという革新的なアイディアを実行に移し、共感を集めました。

女性リーダーは2タイプ。共通点は「共感力」

実は女性リーダーもはっきり2つのタイプにわかれます。ひとつは「おっかさん」系で、どっしりと包容力のあるタイプ。そしてもう一方は「お姉さん」系です。ニュージーランドのアーダーン首相のように若々しく、しなやかな強さを持つタイプですね。

フィンランドのマリン首相は34歳ととても若く、フェミニンな女性。ソーシャルメディア上のインフルエンサーを新型コロナウイルス対策に動員して注目されました。デンマークのフレデリクセン首相は理知的で凛とした人で、ロックダウンの最中には歌を歌いながら皿洗いをする映像をフェイスブックにアップして話題に。子どもたちの質問に答える3分間の記者会見も行いました。

アイスランドのヤコブスドッティル首相も40代の若さながら、しっかりと堅実な印象です。国民全員に対して無料のウイルス検査を提供し、封鎖措置や学校閉鎖も回避したことが評価されています。

いずれの女性リーダーもトップダウンではなく、国民と同じ目線に立つという考え方があるような気がします。共感力や思いやりにあふれ、コロナ禍にある国民の不安に心から寄り添う姿勢が評価されたことで、さらに女性リーダーが増えていくきっかけになると思うのです。