学びの基礎代謝を上げる

よく「教養を身に付ける」といいますが、教養とは高価なアクセサリーで身を飾りたてることではなく、その人自身の内面的な成長で魅力を増すことです。教養を得るには、ある程度の時間と努力が必要です。

ビジネスの場面では、初対面の人に会う前に相手に合わせて、それとなく話題になりそうな知識を仕入れておくということもあるでしょうが、そんな付け焼き刃はすぐに見抜かれてしまうものです。簡単に入手した情報は「1週間で痩せる魔法の薬」と同じで、あまり役に立ちません。実際に汗を流して努力を続けてしっかりした体力や筋肉をつけるように、教養も継続的な時間と努力が欠かせません。

そして、いったん自分で学ぶことのおもしろさを知った人は、その後も学び続ける姿勢が自然と備わります。1つの問いが別の問いを生み、次々に深掘りしたくなる。自分の内にそういうエンジンを備え付けることができれば、いつの間にか基礎代謝が上がり、体形も体力も向上して、自分に自信が持てるようになります。そうなれば、ビジネスの場面でも、たじろがず正面から向き合うことができるようになるでしょう。

私もビジネスパーソン向けのリベラルアーツ講座の講師を務めることがあります。将来、経営を担うことを嘱望されているマネジメントや役員クラスの方が参加されますが、その内容は歴史的、文明論的視点から世界の構造を見極め、日本の問題点や強さを洗い出すものです。それによってリーダーシップを育てるのです。

そこで学ぶ内容はまさに高度な教養。世界の宗教、歴史、倫理、AI(人工知能)などの最新のITや国際情勢、政治などです。まさに今回の特集でみなさんが学ぶことにも近いテーマかもしれません。どんなに最先端の技術や資金があっても、そうした教養がなければ、さまざまな危機的局面において正しい方向にリーダーシップを発揮することは難しいでしょう。

これからは考えや価値観が似ている人ばかりでなく、多様なバックグラウンドを持つ人と協力していかなければ、社会的問題もビジネスも進んでいかない時代です。教養は、互いを理解して協働するためには、不可欠なのです。