内永ゆか子さんが率いるNPO法人J-Winが、各社の男性管理職を集めて実施するプログラム「男性ネットワーク」。その活動の中で、男性たちが、“女性のモチベーションを奪う男性集団の悪意なき言動”に気づき、行動変容を起こしていくプロセスとは。参加者の一人の変化を追った――。
若手の管理職社員のグループがオフィスでコミュニケーションをとっている
※写真はイメージです(写真=iStock.com/imtmphoto)

なぜ、ダイバーシティが進まないのか

「最初に内永さんに言われたことですか? いやー、衝撃すぎて……」

そう苦笑するのは、佐川急便人材戦略部働き方改革推進課の犬塚政彦さん(45歳)。営業畑から人事系の部署に異動したばかりの昨年(2019年)7月、NPO法人J-Winが主宰する1年間・月1回のプログラム「男性ネットワーク」に参加。その初日、異業種の大企業から集まった男性管理職たち19人は、まず内永ゆか子理事長の講義を受けたのだ。

「確か……『日本はダイバーシティ(多様性)という考え方が進んでいない』というお話をされたときだと思いますが、内永さんに指名されて『なぜだと思う?』ときかれ、『島国だから』とか『大陸と地続きじゃなくて外国人が身近にいないから』とか、何かこう……浅いことを口にしたんですよ」

即座に「ダイバーシティが進まない原因はこう」「その根拠はこう」……内永理事長から理路整然とした答えが返ってきて、月並みな回答をした犬塚さんは「恰好の餌食になった」という。「怒られたわけじゃないのですが、やっぱり見当違いがあったなあと」(犬塚さん、以下同)。

世界中の企業は今、生き残りをかけてその構成員の人種・性別・国籍・宗教等々の違い=多様性(ダイバーシティ)を組織内でのイノベーション喚起に生かそうと躍起になっている。それが遅々として進まぬ日本企業を相手に、J-Winは過去13年、ダイバーシティのマネジメント推進を支援してきた。