日本のお粗末な貧困対策
しかし逆に、不景気は貧困層を直撃します。7月に公表された子どもの貧困率の数値は、まだ景気が悪化していなかった2018年のものです。2020年に入って、新型コロナウイルスの感染拡大により、経済状況は一変しています。今現在の子どもの貧困がどのような状態にあるか、データが公表されるのはまだ先のことになりますが、かなり厳しいものであることは容易に想像がつきます。
景気の上下だけに頼る貧困対策はあまり強いものだとはいえません。セーフティーネットとしてそれほど機能しないからです。
働き方改革の一環として、「同一労働同一賃金」が4月から施行され、正規と非正規の格差をなくすような動きや、働き方そのものを変えようという気運は高まっています。しかし結局のところ、労働市場の二重構造などが変わらないと、本当の意味での貧困対策にはならないと私は考えています。
収入が高く生活が安定している人たちにとって、子どもの貧困は全く関係のない問題なのかというと、そうではありません。
研究者の間では、貧困率の高い国はGDPの成長率が鈍化することが知られています。OECD(経済協力開発機構)も警告を出しています。日本の資源は人材しかありませんから、そこが危ぶまれると先行きは暗いでしょう。
子どもの貧困大国、日本
OECDのデータによると、日本の子どもの貧困率は42カ国中21番目に高く、ひとり親世帯の貧困率では、韓国、ブラジルに次いで3番目となっています。世界的にみても貧困率が高く、“貧困大国”ともいえる状況です。
イギリスでは、1999年にブレア元首相が「2020年までにイギリスの子どもの貧困を撲滅する」と宣言しました。その時のイギリスの子どもの貧困率は26%、ひとり親家庭の貧困率は49%でした。日本の子どもの貧困率とほとんど変わりませんでした。
20年以上も前に、イギリスでは子どもの貧困率が高いことが大問題になっていたわけですが、当時の日本ではまったく話題にも上りませんでした。日本で貧困が問題になり始めたのはリーマンショックの後の2009年です。
昔は、みんな「日本は平等社会だ」と無邪気に信じていました。しかし、「一億総中流」と言われていたのは70年代、つまり半世紀も前のことです。今は、日本が格差社会であることは既に露呈していて、さらにはそれを容認するようになってきています。