2020年の報告書が示していること

積立投資のメリットは、まとまった資金がない若年世代でも気楽に資産形成を始められる手段であると同時に、毎月定時定額投資という行動によって目先の価格変動がもたらす精神的動揺や不安を抑制させ、結果的に長期保有を促進させる効用があることだろう。長期に投資継続を実践できてこそ、資産形成の目的にかなう成果が得られるのだ。金融機関が長期資産形成という顧客目的において実践すべき真の顧客本位とは、目的に資する適切な商品提供と共に、アフターフォローへの尽力、つまり顧客に寄り添って適切な投資行動の継続的実行を強く促すことであろう。

こうした金融業界の実態を総括して、本来在るべき「顧客本位の業務運営」の実践を業界全体に強く希求しているのが、今年(2020年)の金融審議会 市場ワーキング・グループによる新たな報告書「顧客本位の業務運営の進展に向けて」であり、去る8月5日に公表されたばかりである。金融業界の従事者はもちろんのこと、資産形成に関心ある読者の皆さんも金融庁ホームページに掲載されているので、是非ご覧いただきたい。

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中野 晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信 創業者

1963年生まれ。東京都出身。明治大学卒業。1987年、現在のクレディセゾンへ入社。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ、運用責任者としてグループ資金の運用のほか、外国籍投資信託をはじめとした海外契約資産等の運用アドバイスを手がける。その後、クレディセゾン インベストメント事業部長を経て、2006年にセゾン投信を設立。2023年6月に代表取締役を退任。セゾン文化財団理事。著書に『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(ダイヤモンド社)などがある。