いつ職を失ってもおかしくない

そういう事実を踏まえて、今後のお金に対する方向を考えてみましょう。コロナ禍によって仕事や生活の仕方は大きく変わってきましたが、今後この状態がずっと続くかどうかはわかりません。ただ、今回の出来事でよくわかったことがあります。それは景気の波だけではなく、今回のような突発的なパンデミックによって自分を取り巻く経済の環境が大きく変わってしまう可能性はいつでもあるということです。

以前もリーマンショックや東日本大震災の時のように一時的に経済に大きなショックが起きることはありましたが、今回、それらと異なるのは、リーマン時のように幅広い業種にわたって影響が出るのではなく、特定の業種が壊滅的な影響を受けているということ。そして震災や台風のように過ぎ去ってしまえばすぐに復興に向けて動き出せるという性質のものではないということです。

したがって、今後も企業の倒産や廃業、及びそれに伴う連鎖的な影響による経営悪化が増える可能性があり、いつ何時、突然職を失ってしまうかもしれないということは覚悟しておく必要があるでしょう。

老後への漠然とした不安をなくす

そんな時代に考えておくべきことは、「自分自身の現在の家計と将来の見通し」です。「2000万円足りない、どうしよう!」といって慌てるのではなく、まずは自分の収支表である家計簿やバランスシートである資産・債務の状況が自分の場合はどうなっているのかという把握をきちんとおこなうことです。繰り返しますが「平均」はほとんど意味がないのです。「自分の場合はどうか?」は自分で考えて把握するしかありません。

私自身、会社を定年退職する2年前から自分で家計簿と資産簿をつけるようにしました。毎月の生活費がどれぐらいなのかを把握することで将来の漠然とした不安がかなり解消されたことを覚えています。今はさまざまな種類の家計簿アプリが出ていますから、それほど家計簿をつけるというのは大変なことではありません。特に資産管理についてはこういうマネーアプリを積極的に利用した方が良いでしょうし、ずっと楽です。

前回のコラムでも現金を持っておくことの重要性をお話しましたが、ただ漠然と持っているのではなく、収支と自分の金融資産全体を管理しておくことが、アフターコロナで安心して生きていける方法ではないでしょうか。

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大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト

1952年大阪府生まれ。オフィス・リベルタス創業者。大手証券会社で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事。定年まで勤務し、2012年に独立後は、「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるように支援する」という理念のもと、資産運用やライフプランニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行った。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。著書に『投資賢者の心理学』(日経ビジネス人文庫)、『定年男子 定年女子』(共著・日経BP)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)、『お金の賢い減らし方』(光文社新書)など多数。2024年1月没。