ゴシップは社会的な絆を強める

私たちは、モラルに反した行動をとっている人をみると、ゴシップを言いたくなります。「ああいう人にはなりたくないよね」と話し合うことで、裏を返せば、「俺たちは善人でよかったね」という気持ちを高めることができ、社会的な絆が強化されるのです。

オーストラリアにあるクイーンズランド大学のキム・ピーターズは、ある人が空き缶を投げ捨てる(または空き缶を拾う)という映像を見せて、「あなたは、この話をどれくらい人に話したいか?」と尋ねてみました。

すると、「空き缶を拾う」という善行をしている映像を見たときには、「そんなに話したくもない」という回答が多かったのですが、「空き缶を投げ捨てる」というモラルに反した行動を見たときには、「だれかに話したい」という気持ちが高まることがわかったのです。

ピーターズによると、モラルに反したことをゴシップとして話すことによって、「自分たちは素晴らしい人」という気持ちになることができ、さらに仲良くなることができるのだそうです。

「○○部長は、会社のお金で飲み食いしてるんだって」
「○○先輩は、勤務時間中に喫茶店でサボっていることが多いよ」
「後輩の○○は、夜の街関係の情報に詳しいらしいよ」

そういったゴシップのネタを展開することで、男性たちは絆を深めていくのです。「まったく、うちの会社の重役どもは、どうしようもないね」とお互いに笑い合っていれば、仲良くなれないわけがありません。

うわさ話を振られたらどうすべきか

うわさ話をしなくても仲良くなれる女性たちはにとっては、ばかばかしく見えるかもしれません。では、男性たちのうわさ話にどう対応すればよいでしょうか。自分からはうわさ話をしたくないと考える女性も多いでしょう。

私は大学の先生もしていて、教え子たちとはものすごく仲がいいのですけれども、その理由はというと、ここだけの話ですが、他の先生の悪口を聞いてあげるからです(さすがに自分からは言いません)。

「○○先生は、課題が厳しすぎる」とか、「○○先生は、かわいい子にだけエコヒイキする」とか、そういう教え子の話を、「ふむ、ふむ」と聞いてあげるだけで、けっこう親しくなることができます。

自分からは、どうしてもゴシップを話したくないというのであれば、ゴシップの聞き役になるのもひとつの手かもしれませんね。

それでも十分に、人は仲良くなれるものなのです。

(参考)Peters, K., Jetten, J., Radova, D., & Austin, K. 2017 "Gossiping about deviance: Evidence that deviance spurs the gossip that builds bonds." Psychological Science ,28, 1610-1619.

写真=iStock.com

内藤 誼人(ないとう・よしひと)
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長

慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は釣りとガーデニング。著書に『いちいち気にしない心が手に入る本:何があっても「受け流せる」心理学』(三笠書房)、『「人たらし」のブラック心理術』(大和書房)、『世界最先端の研究が教える新事実心理学BEST100』(総合法令出版)、『気にしない習慣 よけいな気疲れが消えていく61のヒント』(明日香出版社)、『羨んだり、妬んだりしなくてよくなる アドラー心理の言葉』(ぱる出版)など多数。その数は250冊を超える。