1.価値観の相対化ができる

遠く離れた場所にいる仲間や友人のように、価値観が同じで、かつ物理的距離が離れている者同士は、お互いを違う角度から見たり、意見を言ったりすることができます。

たとえば同じ日本人同士だと、普段から似たような世界で生活しているため、外出自粛などこれまで経験したことがない現状を前にしたとたん、ついお互いを不安の渦に巻き込んでしまうかもしれません。しかし、僕の海外の友人らは「日本は医療レベルが高いからいいよね」「罰則もなしに国民自ら自粛するなんて、うちの国じゃありえないよ。日本は優秀な国だね」などとメールしてくれるのです。

彼らは、物理的距離が離れているからこそ、より相対的な視点を投げかけてくれるのです。

今日本にいて無事でいられている自分だからこそ、もっと困っているかもしれない人に対して、今できることは何かを自然と考えられるようにもなります。

2.遠く離れているからこそのサポートができる

尾原和啓『あえて数字からおりる働き方 個人がつながる時代の生存戦略』(SBクリエイティブ)
尾原和啓『あえて数字からおりる働き方 個人がつながる時代の生存戦略』(SBクリエイティブ)

さらに、物理的距離が離れている者同士なら、片方が沈んだとき、片方がサポートすることもできるのです。たとえば会社が沈んだとき、同じ会社員同士では助け合うことができません。しかし、もしあなたがITマーケティング会社に勤めていて、飲食業で困っている友人がいたら、ネットを駆使したサポートをしてあげられるでしょう。もしあなたが日本で飲食業をしていて、中国に輸出業を営む友人がいたら、彼らにサポートしてもらえるかもしれないし、彼らが大変なときは、あなたがサポートしてあげられるかもしれません。

つまり、非常事態でそれぞれ困難に見舞われていたとしても、物理的距離があって、かつ同じ価値観を持つ者同士は、インターネットを通じて共助の関係をつくることができるのです。

今僕たちに必要なのは、安全欲求、生理的欲求さえ満たされなくなるかもしれない時代の中で、物理的距離にかかわらず、いかに仲間と支えあって、自分ができることを困っている人におすそ分けする互助・共助の輪をつくっていけるのかを、それぞれが意識していくことなのです。

写真=iStock.com

尾原 和啓(おはら・かずひろ)
IT批評家

1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用システム専攻人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート(2回)、ケイ・ラボラトリー(現:KLab、取締役)、コーポレイトディレクション、サイバード、電子金券開発、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業に従事。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザー等を歴任。著書に『アフターデジタル』(共著、日経 BP)、『ITビジネスの原理』(NHK出版)、『モチベーション革命』(幻冬舎 NewsPicks book)、『プロセスエコノミー』(幻冬舎)など多数。