国のお墨付きがあれば満員電車もすぐ解消
しかし、以前の記事「台風でも出社時間を死守させる日本人の異常さ」でも述べたように、始業時間や就業時間は法律による「決まり」ではありません。その企業の働き方が、そういう仕組みになっているというだけのことです。
僕にとって満員電車の復活は、定時出社=決まりという思い込みの根強さをあらためて感じさせるものでした。同時に、日本企業が「その場にいること」を重視する風潮も、あらためて浮き彫りになったと思います。
こうした思い込みや風潮があるにもかかわらず、緊急事態宣言中だけは一時的に満員電車解消されました。これは外出自粛やリモートワーク推奨という、国による「お墨付き」があったからではないでしょうか。各企業が自らの意思で働き方を変えたわけではなく、国の施策だから変えたのです。
自ら働き方を変える場合は、その結果に対して責任が伴います。もし生産性が下がったり顧客が離れたりしたら、決定した人たちはその責任をとるよう求められるでしょう。そんな事態はできる限り避けたい──。こう考える企業も多いのではないかと思います。
緊急事態宣言では責任の所在は国にありますから、企業の意思決定者が責任を負う必要はありません。結果、リモートワークはかつてないほどスムーズに実施されることとなり、満員電車も一時的に解消されたのです。
企業が自ら変わろうとしていないことこそが大問題
ところが、今は全員出社や満員電車が復活しているように、結局は多くの企業が元の働き方に戻ってしまいました。タイミングから見て、原因はとても単純で「緊急事態宣言が解除されたから」、つまりお墨付きがなくなったからでしょう。
これは企業が自ら変わろうとはしていない証しであり、僕はこの点こそもっとも大きな問題だと思います。この先労働人口が減ることを考えると、会社に「いる」ことが大事という働き方からは、もうそろそろ脱却しなければなりません。
リモートワークにあたっては、「部下は上司の目が届く場所で働くべき」「目の前にいないから評価できない」と言う上司もいると聞きます。僕からすると、そういう人は部下との間に、任せる・信頼するという基本的な人間関係ができていないのかなと感じます。以前からずっとあった問題点が、リモートワークになったことであぶり出されただけではないでしょうか。