消費のグローバル化による大打撃

これはなんとも皮肉なことである。バブル崩壊後、モノが次第に売れなくなり、デフレが進行し、モノの値段がすべて安くなっており、モノではもうからなくなった。人口減少も始まり、超高齢化が深刻化し、モノを次々に買い替える子育てファミリー層も減少し、ますます消費はコト消費、サービス消費にシフトした。

三浦展『コロナが加速する格差消費 分断される階層の真実』(朝日新書)
三浦展『コロナが加速する格差消費 分断される階層の真実』(朝日新書)

だが安いものしか買えない一般消費者が高いサービスを買えるわけはないので、コト消費、サービス消費は比較的裕福な人たち(つまり「中の中」以上)が主役となった。かつ、日本人だけでは「中の中」以上の人口が不足しているので、中国など海外からのインバウンドを大幅に増やした。消費がグローバル化したのだ。

ところがまさにこのインバウンドの中国人や富裕層のクルーズ船を始めとする海外からの帰国者が大きな火種となってコロナは広まった。政府のコロナ対策が遅れた一因も海外との交流を素早く規制できなかったところにあるし、さらにその背景には東京五輪の開催を中止したくないという思惑があった。インバウンドも日本人旅行者も少なく、五輪開催の予定もなければ、もっと対策は早く厳しく行われたであろう。

アフターコロナの消費意欲はどこへ向かうのか

コロナリスクの完全な払拭というのは難しく、事態は長期化するらしい。インバウンド、日本人の旅行、特に海外旅行、大規模施設でのスポーツ、観戦、ライブなどなどは当分元通りには回復しない。

飲食店も完全復活は厳しそうだ。となると、高級化して単価を上げる店が増える可能性もある。もともと低価格の大衆居酒屋チェーンは厳しいだろう。個人店の居酒屋で常連で成り立つという店はなんとかやっていけるかもしれない。

人々の消費意欲はますます健康、衛生、保険などのリスク関連、ケア関連に向かうのではないかと思われる。

写真=iStock.com

三浦 展(みうら・あつし)
社会デザイン研究者/カルチャースタディーズ研究所代表

1958年生まれ。82年、パルコ入社。86年からマーケティング誌『アクロス』編集長。三菱総合研究所を経て99年、カルチャースタディーズ研究所設立。消費社会研究家として消費・都市・社会を予測、大手企業や都市・住宅政策などへの助言を行う。