女性から届いた「男性の側から言ってくれてありがとう」
前述の記事は、この気づきから書いたものです。繰り返しになりますが、女性のアイデアや観点を生かすことは、事業や社会の成長を考えるととても合理的。だから女性の意思決定者や起業家はもっと増えていいはずですし、そのためのロールモデルとしてイベントの主催者もそうした女性にどんどん目を向けてほしい。
そしてできれば、男性の間でも同じ考え方がじわじわ広がっていったらいいな、と期待しています。
男性からの賛同意見も結構もらっているんですが、登壇者やイベント主催者からの明確な賛同はまだあまり多くありません。今後、影響力のある男性から「俺もそうする」的な宣言がもっと増えてきたら、社会は一気に変わると思っています。
だからといって、「男が席を譲るべきだ!」と正論を振りかざすつもりはありません。イベントも事業ですから、登壇者選定には集客力も重要ですし、登壇者にとっても不義理や収益減のリスクがありますから、多く登壇されている方ほど方針を変えるのは簡単なことではありません。焦ると「批判vs反論」といった対立構造につながってしまうので、小さな声でも発することで、漢方薬みたいにじわっと、現在の世の中の“体質”が変わっていったらいいなと思っています。
女性からは「男性の側から言ってくれてありがとう」という意見を多くいただきました。同じ内容を女性が言うと批判的な返信が続々と飛んでくるそうで、まずそこにびっくりしましたね。当事者としてずっと声を上げてきた女性がたくさんいて、皆もどかしい思いをしているんだなとあらためて感じるとともに、まだ「宣言」をしただけの僕がこのように取り上げられ、恐縮もしています。
会社命令で、頭数をそろえるためだけイベントに駆り出され、「正直面倒くさい」という女性もいました。楽屋でおじさんの自慢話を延々と聞かされ「接待要員じゃないんだから」と辟易している女性もいました。
こうした話を聞くたび、「まだまだ男女平等については移行期なんだな」と思わされます。形だけでなく、男性も女性も全員が互いに敬意をもって吸収し合うのがカッコいいという風潮に、早くなってほしいです。急がないと、活躍したい女性にとって男性全体が信用できない存在になっていくかもしれません。それは個人的にも娘をもつ父親としても嫌ですし、社会にとっても大きな不利益だと思います。
「なぜ数合わせをしなくてはならないのか?」
記事には、もちろん反対意見も寄せられました。ある男性からは「能力主義の時代なのに、なぜそこまでして男女の数を合わせる必要があるのか」という意見をいただきました。これに対する僕の考えは「能力主義は大賛成。でも能力主義を本気でやったら、男女不均等になんてならないはず」です。
それでも不均衡だとしたら、数年前に問題になった、医学部の入試問題のように、意図的な操作が行われているということです。
あるいは「能力の評価軸」の問題もある。仕事における「能力」は、「誰かの評価」です。そして今の日本の評価基準は、「男性にフィットするようにつくられた社会」の価値観でできています。いわば、一部の人が決めた軸が基準になっているわけで、それも本来変わっていかなければならない。
今回のコロナショックでも、海外では女性リーダーのしなやかで的確な対応に賞賛が集まりました。日本でも本気で能力主義を徹底し、能力の基準そのものを見直したら、今能力者とされている人たちがどれだけ入れ替わるか。これには既得権益のある人ほど抵抗するでしょうが、従来の評価基準からそろそろ脱却しないと、今後日本は成長していけないのではないかと強く危機感を持っています。