事前の丁寧な準備で、関係づくりに役立つ接待を

一流の接待とは、何がポイントとなるのか。マナーコンサルタントとして、多くの企業で「接待マナー研修」を行う西出ひろ子さんは、「接待はお互いの会社の収益を上げることが目的。それは社会に利益を還元するという社会貢献にもつながります」と接待の意義を語る。

そのために重要なのが、お互いが気持ちよく語り合い、誤解のないコミュニケーションができる関係性づくりの場。「それには、先方の立場に立った思いやりで、心からのおもてなしをすることが大切です。相手の好みのリサーチや店選び、マナーなど事前の準備をしっかりしておくことが、接待の成功を左右します」

“相手に合わせた”おもてなしを

接待は相手によってもその内容が大きく変わる。役職クラスには名の通った店の個室で、車での移動も考慮した場所を。外国人の場合は、日本料理に興味があるかないかで選択肢が違う。

接待/事前にやること・当日やること・翌日やること

和食をセレクトしたときは、椅子席や掘りごたつでくつろげるような配慮が必要だろう。女性への接待では、店の雰囲気や料理の見た目、充実したデザートなど、「インスタ映え」を意識した女性好みの店選びを。化粧室の空間が素敵だと、よりポイントが高い。

「接待をうまく進めるには、お店側のアシストも重要です。事前にしっかりと打ち合わせをするのはもちろん、お店の方にも丁寧な対応や言葉がけを心がけるようにしましょう」

ちょっとしたサプライズも場を盛り上げてくれる。西出さんも「以前、先方の会社にリムジンを手配して、接待会場までお連れしたことがあります。10~15分ほどの短い乗車時間でしたが、とても喜んでいただけて、はじめから会話が進みました」というエピソードを教えてくれる。

このように目的や相手によって接待のあり方は違っても、「心から喜んでもらいたい」という基本は同じ。

「“接待はこういうもの”というマニュアルに縛られず、相手に合わせて自分で考えて行動することで、おもてなしの心が伝わるもの。それはビジネスでも同じだと思います」

西出ひろ子(にしで・ひろこ)
マナーコンサルタント
ヒロコマナーグループ代表、一般社団法人マナー教育推進協会代表理事。国会議員などの秘書を経てマナー講師として独立。NHK大河ドラマのマナー指導、企業のマナー研修などを数多く手がける。『かつてない結果を導く超「接待」術』(青春出版社)ほか、著書累計100万部。
工藤 千秋(くどう・ちあき)
フリーライター