取引先、ビジネスパートナーなどとの人間関係を深める貴重な機会となる「接待」。成果を出しトップとして活躍する女性リーダーは、接待の場でも心のこもったおもてなしをスマートに実践している。準備から当日の段取り、お礼まで、リアルな接待術を教えてもらった。
接待で心のこもったおもてなしをしている女性リーダー
イラスト=中嶋クミ

人間関係を深め、お互いにメリットとなる「接待」を

ビジネスではお互いの信頼関係が何よりも重要だ。その人間関係をスムーズにするための場が「接待」。お酒や食事を一緒に楽しみながら会話を弾ませ、お互いを深く知って親しくなる。そういうコミュニケーションが、最終的に何らかの形でビジネスによい作用をもたらしてくれる。

最近は「接待」という言葉を使わずに「会食」という言い方をすることも多いが、いずれにしてもビジネスにおいて相手を心からもてなし、関係を深めるコミュニケーションは欠かせないスキルといえるだろう。

とはいえ、時代は令和。ひと昔前のような相手をひたすら持ち上げることで見返りを求める「ザ・接待」スタイルは、敬遠されがちだ。ビジネスの現場から一歩離れた空間だからこそできる、普段とは違う一面の発見や、有益となる情報交換など、お互いが一緒の時間を過ごしてよかったと思えるWin‐Winな関係づくり――。めざすのは、そんな今どきのスマートな接待だ。

そこで今回は、接待の経験が豊富なビジネスウーマンのリアルな声を交えつつ、事前準備から店選び、当日の会話やマナーまで「できる接待」のノウハウを紹介する。

事前の丁寧な準備で、関係づくりに役立つ接待を

一流の接待とは、何がポイントとなるのか。マナーコンサルタントとして、多くの企業で「接待マナー研修」を行う西出ひろ子さんは、「接待はお互いの会社の収益を上げることが目的。それは社会に利益を還元するという社会貢献にもつながります」と接待の意義を語る。

そのために重要なのが、お互いが気持ちよく語り合い、誤解のないコミュニケーションができる関係性づくりの場。「それには、先方の立場に立った思いやりで、心からのおもてなしをすることが大切です。相手の好みのリサーチや店選び、マナーなど事前の準備をしっかりしておくことが、接待の成功を左右します」

“相手に合わせた”おもてなしを

接待は相手によってもその内容が大きく変わる。役職クラスには名の通った店の個室で、車での移動も考慮した場所を。外国人の場合は、日本料理に興味があるかないかで選択肢が違う。

接待/事前にやること・当日やること・翌日やること

和食をセレクトしたときは、椅子席や掘りごたつでくつろげるような配慮が必要だろう。女性への接待では、店の雰囲気や料理の見た目、充実したデザートなど、「インスタ映え」を意識した女性好みの店選びを。化粧室の空間が素敵だと、よりポイントが高い。

「接待をうまく進めるには、お店側のアシストも重要です。事前にしっかりと打ち合わせをするのはもちろん、お店の方にも丁寧な対応や言葉がけを心がけるようにしましょう」

ちょっとしたサプライズも場を盛り上げてくれる。西出さんも「以前、先方の会社にリムジンを手配して、接待会場までお連れしたことがあります。10~15分ほどの短い乗車時間でしたが、とても喜んでいただけて、はじめから会話が進みました」というエピソードを教えてくれる。

このように目的や相手によって接待のあり方は違っても、「心から喜んでもらいたい」という基本は同じ。

「“接待はこういうもの”というマニュアルに縛られず、相手に合わせて自分で考えて行動することで、おもてなしの心が伝わるもの。それはビジネスでも同じだと思います」

西出ひろ子(にしで・ひろこ)
マナーコンサルタント
ヒロコマナーグループ代表、一般社団法人マナー教育推進協会代表理事。国会議員などの秘書を経てマナー講師として独立。NHK大河ドラマのマナー指導、企業のマナー研修などを数多く手がける。『かつてない結果を導く超「接待」術』(青春出版社)ほか、著書累計100万部。