テレワーク時代に、手軽に味わえる「非日常」
マイクロツーリズムそのものは昔から存在していました。1960~70年代は、むしろ大半がマイクロツーリズムだったと言っていい。当時は新幹線が東海道新幹線と山陽新幹線しか開通していなかったし、高速道路網もいまほど発達していませんでした。また温泉旅館へのニーズが高く、“上げ膳据え膳”で何もしなくていいことが魅力でした。50年60年前の日本では、地元の人が地元の温泉旅館に宿泊してくつろぐスタイルが一般的だったのです。
その後、交通網の発達でマイクロツーリズムを楽しむ人は減りましたが、今回のコロナで人気は再燃するに違いありません。日帰りの観光も人気が出ると思いますが、注目は、やはり温泉旅館への宿泊でしょう。温泉保養は、コロナで溜まった疲れやストレスを癒すのにぴったりです。また、テレワークで自炊の機会が増えているので、上げ膳据え膳はありがたい。献立を考えなくていい、買い物に行かなくていい、料理をしなくていい――。この非日常を手軽に味わえるのが、地域の温泉旅館に宿泊する魅力といえます。
まずは地元のガイドブックを購入しよう!
マイクロツーリズムに関心があっても、どこにどう遊びに行けばいいのかわからない方もいるでしょう。情報収集にお悩みの人は、まず地元のガイドブックを買ってみてはいかがでしょうか。台湾に旅行に行くときは、みなさん台湾のガイドブックを買いますよね。マイクロツーリズムも同じ要領でいい。東京に住んでいる人は、東京のガイドブックを買ったことが無いという人が案外多いのではないでしょうか。ガイドブックを開くと、自分ではよく知っているつもりのエリアに意外な観光スポットがあったりして、地元の魅力を再発見できます。
観光事業者も、地元の魅力を地域内に向けてもっと積極的に発信したほうがいいと思います。星野リゾート自身がそうでしたが、これまでは情報発信というと、遠くの大都市や世界に向けたものになりがちでした。しかし、足元に目を向ければ、長年親しまれているタウン誌やコミュニティFMなど地域に根ざしたメディアがいろいろあります。そういうところでコーナーをつくってもらえれば、地域の魅力を地元のみなさんにお伝えできるはずです。
地元民も知らない新しい“地産地消”を味わう
もちろん、観光事業者が頑張らなくてはいけないのは情報発信だけではありません。昔の温泉旅館は、山間部にあっても伊勢海老が食べられる贅沢さが求められました。現代の上げ膳据え膳は違います。いまは地産地消が観光の重要なテーマで、お客様もその土地でしか食べられないものか、その土地のおいしいものを求めて旅館にいらっしゃる。ただし、マイクロツーリズムの場合、お客様は地元の食材を普段から食べ慣れています。同じ地産地消でも、お客様が食べたことのないような調理や提供の方法を工夫する必要があるのです。
ここは各宿泊施設の腕の見せどころでしょう。たとえば浜名湖畔に建つ「星野リゾート 界 遠州」では、浜名湖名物のウナギをご提供しています。しかし、地元の方にとってウナギという食材は珍しくありません。そこでアボガドと組み合わせた一皿をお出ししています。地元の方が召し上がっても、「こんな組み合わせもあるのか」と新たな発見をしていただける自信の一皿です。旅行を検討している方は、宿泊施設のこうした工夫に注目して宿を選ぶといいかもしれません。