感染の自己責任論は非常に危険

最近一部の職場では、感染した人が責められたり、職場に居づらくなる扱いを受けたり、ひどい場合には解雇されたりするケースがあると聞きますが、これらは真の感染対策とはほど遠い行動で、医師として強い危機感を覚えます。

確かに新型ウイルスということで、不安や恐怖が多くの人の気持ちの中にあるのは当然です。正直、毎日のように熱発者や「カゼ症状」の患者さんを診察している私も、自分が感染して重症化したらと考えると心配になることもあります

しかし、だからといって、感染を悪と位置づけたり、感染したのはその人の行いが不適切だったからだと非難したり、感染者を社会から排除しようとしたり、感染は自己責任という風潮が蔓延していくことは非常に危険です。

病気を理由にした差別は、感染拡大を助長する可能性さえあるのです。

職場で責められる、解雇されるということになれば、具合が悪くてもそれを隠そうとする人が増えるでしょう。症状があるのに隠して無理して出社すれば、それだけ感染も広がります。

体調が悪ければ遠慮なく休める会社へ

逆に「カゼ症状があるならコロナかどうか病院に行って診断してもらってから出勤しろ」と上司が部下に命じることも、決してしてはいけません。仮に検査を行って陰性という結果が出ても、それは「コロナではない」という意味では絶対にないからです。具合の悪い従業員には「病院に行ってコロナでなければ出勤しろ」でなく、検査の有無、検査結果にかかわらず「休みなさい」と言ってあげねばなりません。

今さら言うまでもないことですが「陰性証明書をもらってこい」などと命じるのも論外中の論外です。絶対に行ってはなりません。

企業が感染対策として行うべきことは、従業員に非感染の証明を求めることではなく、風邪であれ新型コロナウイルス感染症であれ、体調が悪ければ気軽に申告できる、そして遠慮なく休める環境を一刻も早く構築することなのです。そのためには、コロナか否かの検査結果によらない有給病気休暇や休業補償の整備は必須であると言えるでしょう。