いざというときになって慌てて準備をして希望に沿わない葬儀になることは避けたいもの。わが家に万が一のことが起きたらと仮定して家族で考えをまとめておきましょう。葬儀の心構えは「備えあれば憂いなし」の一言に尽きるのです!

小規模な葬儀が今後増える理由

葬儀社に要望を正しく伝え、希望通りの葬儀を実現するには、4つの要素について、「わが家の方針」を定めておくことをおすすめする。

イラスト=こいずみめい
イラスト=こいずみめい、以下すべて同じ

まずは葬儀の規模。近親者以外の外部参列者を招く中規模から大規模な葬儀は「一般葬」と呼ばれている。一方、小規模葬は「家族葬」「密葬」で、近年主流になってきている。新型コロナウイルスの影響で、葬儀場に集合しづらい世情も相まって、家族葬の割合はさらに高くなるだろう。通夜を省いて告別式のみを執り行う「一日葬」も、近親者のみで営まれることが多い。火葬のみで済ませる「直葬」という選択肢もある。

「どのくらいの範囲の人に参列してもらうか」を考えておきたい。

2つ目は、どの宗教形式を用いるか。仏教の「仏式」、神道の「神式」のほか「キリスト教式」「無宗教式」の4種類が主な形式だ。日本では、葬儀の9割近くが仏式だといわれている。仏式の場合、必ず確認しておきたいのが「菩提ぼだい寺の有無」と「宗派」だ。菩提寺とは、その家の先祖代々からの供養をしている寺院のことで、基本的に葬儀の読経や戒名の依頼先となる。菩提寺がない場合は、葬儀社から紹介してもらったり、僧侶派遣のサービスを利用したりして手配する。「宗派」とは、浄土真宗や曹洞宗といった仏教の流派のことで、葬儀の依頼や僧侶手配の際に必要な情報となる。

続いて「安置の場所」。日本の法律では、死後24時間は火葬ができないことになっているため、感染症などで亡くなった人は例外として、遺体はどこかで1泊以上を過ごさなければならない。病院では病床数や霊安室の都合から、死亡後は数時間以内に退院を促されるのが通常で、「故人をどこに搬送するか」が、残された遺族の最初の意思決定となる。まず、自宅で安置が可能な場合は自宅へ搬送してもらうのがスムーズだ。ほかに火葬場に併設の保冷施設や、葬儀社の安置室、地域によっては民間の安置専用施設などがある。

4つ目の要素が、祭壇の飾り方や、食事、思い出の品の展示など、その人ならではの個性を、葬儀でどのように表現するか。これまでに、祭壇に一升瓶をずらっと並べたり、参列者の奏でる祭りばやしで見送ったり、さまざまな「その人らしさ」を目にしてきた。こだわりがある葬儀には、必然的に遺族が能動的に関わることになる。そのような葬儀に共通するのは、遺族の満足度が高いということだ。