上限を決めてから総額の見積もりを取ろう

費用のわかりづらさこそが葬儀のわかりづらさであり、認識の違いからトラブルにつながることもある。「依頼時の金額と請求金額が大きく違う」とならないためにも、葬儀費用の仕組みを知っておこう。

イラスト=こいずみめい

広告などでよく見かける「葬儀一式の費用」と聞いて、どんなイメージを持つだろうか。葬儀で必要なすべてが含まれると考える方が多いのではないかと思う。しかし、葬儀における葬儀一式という言葉は、葬儀の一部しかカバーしていない、いわば業界用語だと思ってほしい。葬儀社に支払う葬儀費用は、葬儀一式と実費に分かれている。

葬儀一式として提示される金額は、祭壇飾り、ひつぎ、人件費の3つが大部分を占める。これ以外に実費として、通夜料理などの飲食接待費、香典返しや返礼品の費用、式場や霊柩れいきゅう車などの利用料、火葬料などがあり、これらは別途必要分を計算され、請求時に葬儀一式と合算される。さらに、お布施などの宗教者への謝礼を加えて、葬儀で必要な費用の総額となる。

葬儀の費用はその規模によって変わり、お布施を除いた目安としては、最も簡素な直葬(火葬のみ)で、20万~40万円、一日葬で50万~80万円、家族葬で70万~100万円、中規模(100人以下)の一般葬で120万~150万円、大規模の一般葬で150万円以上が大まかな価格帯だ。ただし、地域差や葬儀社ごとの価格設定の違いのほか、希望する内容によってはさらに幅が出ることもあるため、具体的な費用は葬儀社から見積もりを取るのが一番。必ず「実費を含めた総額」を出してもらおう。

ただし、葬儀では参列者からの香典があり、1人あたりおおよそ5000~7000円、100人ならば50万~70万円の収入ということになる。香典を受け取らないという場合を除いて、葬儀の規模を決める際には、収入も加味して考えるとよい。

費用の中でそれなりの割合を占めるお布施だが、お布施とは読経や戒名に対しての対価ではなく、あくまでも感謝の気持ちとされているため決まった金額はない。とはいえ、感謝の気持ちを表すのに失礼にならないためにも目安を紹介しておこう。お布施の額は、その寺院の格式、地域、宗派、付き合いの深さなど、さまざまな要素で変動するが、中でも最大の要素は戒名の位(ランク)だ。

戒名の下から2文字が「位号」といって位を表し、男性は「信士」、女性は「信女」が一般的な位とされている。2日間の読経と「信士・信女」の戒名を授かる場合で30万~40万円、位が上の「居士」(男性)、「大姉」(女性)では、50万~80万円を包む家が多い。さらに戒名の上に「○○院」と「院号」がつくと100万円以上のお布施を包む家も。

葬儀費用で予算オーバーにならないためには、葬儀一式+実費+お布施の総額の上限を定めておくとよい。

家計から出ていく「葬儀費用」の全貌