代々受け継いでいくか、一代限りの供養か

お墓にまつわる状況は人それぞれ違ううえ、時代とともに変化し続けている。お墓の埋葬スタイルは、代々受け継がれる「累代墓」と、一代限りの「永代供養墓」の2つに大別できる。多くの人が「お墓」と聞いてイメージする、墓石が立っていて、ご先祖さまが眠っているお墓が累代墓だ。墓地を継承する次の代がいない場合は、納骨堂や合祀ごうしタイプの慰霊塔に埋葬されるのが主流。近年関心が高まっている樹木葬や海洋散骨といった自然葬も、一代限りという意味では、広義で永代供養に分類できる(※)

※供養とは本来は仏教用語だが、無宗教の場合でも「永代供養墓」と呼ばれることがあるためそう表記している。

墓地や永代供養墓は運営する母体により「寺院」「公営」「民営」の3種類がある。寺院墓地のメリットは、管理が行き届いていることや、本堂を利用して法要などが行えることに加え、手厚く供養してもらえているという安心感を得られるという人も。デメリットは、檀家になっている場合は、寄付やお布施など相応の負担が求められることや、墓石のデザインに制約があったりすること。また、利用できるのが檀家や同じ宗派に限られていることも。

公営霊園は宗教や宗派を問わずに利用でき、永代使用料や管理費が手頃で、自治体が運営しているため廃業の心配がない。しかし、公募制で、都市部は特に競争率が高いことや、利用上の諸条件があることが多い。

イラスト=こいずみめい

民営霊園のメリットは、宗教や宗派を問わずに利用でき、墓石のデザインや大きさの選択肢があり、施設が整っていること。数が比較的多く随時募集していることが多い。公営に比べ費用が高いことや運営会社により管理やサービスの質に差があることがデメリットだ。

累代墓を新たに建立する費用は、墓石本体のほか、建立の工事費用、永代使用料、仏式の場合はお布施などで、墓地の永代使用料や墓石の大きさで開きがあるものの、おおよそ200万~300万円。納骨堂の場合は、コインロッカータイプで30万~50万円、機械式のタワータイプで80万~100万円。なお、公営は10万円程度から利用できる場合もある。合祀タイプの慰霊塔は10万~30万円。ただし、遺骨の個が保たれないことを理解したうえで利用したい。

自然葬では、樹木葬が30万~50万円、海洋散骨は船をチャーターすると30万円程度、散骨業者に任せる場合は5万円程度から依頼できる。

今、継承者がいないお墓が6割を超えていると聞く。継承者がいない、もしくは、継承者がいても、お墓が遠方で維持しづらい場合には手放すことになる。これが最近耳にすることが増えた「墓じまい」だ。先祖代々の遺骨を弔い上げするなどして、現在立っている墓石を撤去し、更地にして運営者に返す。費用は40万~70万円ほどかかる。

お墓を考える際は、代々続いていくのか、それとも一代限りで供養するのか、今の状況だけではなく、将来を見据えて検討することが大切だ。

自分たちに合った墓地はどれ!?

イラスト=こいずみめい

市川 愛(いちかわ・あい)
市川愛事務所代表

1973年生まれ。服飾メーカー、葬儀社紹介企業を経て、2004年に日本初の葬儀相談員として起業。市川愛事務所代表。終活普及協会理事。正しい葬儀情報と終活を広めるための活動に従事。著書に『後悔しないお葬式』(角川SSC新書)など。