3.若手が素を出しやすいデジタルツールを活用

今の新人育成においてもうひとつ欠かせないのが、デジタルツールの活用です。

新型コロナウイルスの影響で、今年は新入社員研修をオンラインで実施した会社も多いでしょう。今後OJTの段階になっても、基礎知識や正解のあるノウハウについては、動画やウェブ学習コンテンツなどを用意して「これを見ておいて」「こういうふうにやって」というのが効率的です。新人は都合の良いタイミングで学習できますし、分からないところは何度も繰り返し見られます。

一方で、実際に仕事をしてみた後に「どうだった?」と振り返りをするときは、上司のサポートが必要です。新人が「うまくできたと思う」と言えば、「どの部分が良かったの?」「この点についてはどう思う?」といろいろな切り口から考えさせるのです。このようなリフレクションをするときに、新人は一番成長します。ビデオ会議ツールなどを使ってもできますので、新人との対話の時間を必ずとるようにしましょう。

オンラインのほうが本音が出しやすい若者も

なお、若い人たちは、上司や先輩に直接声をかけるのは苦手だけれどオンライン上でのやり取りは慣れていてそちらの方が、素が出せるというタイプが意外と多い印象です。

職場で直接「調子はどう?」と聞くと「大丈夫です」と返してくる人も、チャットで聞いてみると「ちょっと分からないことがありまして」とか「悩んでいます」と言いやすい可能性があります。

また、相談や進捗報告などがしたくても、タイミングを見計らって上司に声をかけることに難しさを感じる新人は多いものです。オンラインツールを活用し、「定期的にこのフォーマットで報告してと指示しておけば、新人は安心して相談や報告ができ、マネジャーも部下の様子が把握しやすく、双方にメリットがあります。

ただ、オンラインでのやり取りができていれば全く会わなくても仕事ができるようになるかというと、それも難しいでしょう。

オンラインで素が出せることと、信頼関係が作れるということはイコールではありません。同じ組織の一員として協力しあえる関係になるには、リアルな協働体験を積んだり、仕事以外のことも含めて雑談をしたりということの積み重ねも必要なのではないかと思います。

Withコロナ時代のマネジャーには、オンラインを使ったコミュニケーションと、対面でのそれを、目的に応じて使い分けていく力も求められていると言えるでしょう。

構成=やつづかえり 写真=iStock.com

桑原 正義(くわはら・まさよし)
リクルートマネジメントソリューションズ 主任研究員

1992年、人事測定研究所(現リクルートマネジメントソリューションズ)入社。営業、商品開発、マーケティングマネジャー、コンサルタント職を経て2015年より現職。新人若手育成を専門領域とし、10年以上のコンサルティング経験を土台に、これからの時代の育成や学習手法の研究開発に取り組んでいる。立教大学経営学部兼任講師。NPO法人青春基地にプロボノ参加中。