1.“答え”を欲しがる部下の自発性を引き出す方法
若い人たちは、知りたいことがあればすぐにインターネットで調べることができ、欲しいものを効率的に手に入れることに慣れています。やったことのないことに挑戦して失敗するのは不安だし、非効率だと考える人も多いです。
上司も、昔なら自分の経験を基に方針を示し、上意下達でやっていくのが効率的でした。そのようなリーダーシップを取れるのが優秀なマネジャーと評価されたのです。
でも今は、上司の言うことを聞く人ばかり育てていたら組織はたちゆかなくなってしまいます。つまりマネジャーと新人双方が、大きなパラダイムチェンジを迫られているのです。
まずは失敗しないやり方を知りたいと思う新人たちにトライとラーンの習慣を身に付けさせるために、マネジャーは何ができるでしょうか。
ひとつには、部下の自発性を引き出す工夫です。正解を教えるのではなく、自ら考えてトライ&ラーンをするためのサポートをするのです。
新人に、いきなり「考えてやってごらん」と言っても動けないかもしれません。そんなとき、How(どうやってやるか)を教えてはいけません。その代わり、その仕事が必要な理由(Why)や目的(Goal)について考えるようにアドバイスするなど、考えるための“視点”を提供するのは一案です。意味を感じるかどうかは、自発の大きなきっかけになると思います。
また、新人が考えたりトライしたりすることについて、上司が口をはさむと忖度が生まれ、本人の率直で素直な思考や感情が出しづらくなります。上司からの働きかけは「問いかけ」にとどめ、本人の考えと決定を尊重するようにしましょう。
2.結果を求めずナイストライを評価する
先にもお伝えしたとおり、新人のトライにすぐ結果を求めてはいけません。まずは上司の側が、「結果がすぐ出せないとダメ」というパラダイムから脱却しましょう。
評価の際は、「なにができたか」ではなく「どれだけトライしたか」を見るのです。「できたかどうか」を評価するのであれば、誰もトライしなくなってしまいますからね。
野球に例えるなら、新入社員には、利き腕だった右投げから、未経験の左投げに変わるのと同じくらい大きな変化が求められているのです。そんな状況でも上達するのは、最初はいいボールが投げられなくても、恥ずかしがらずに投げ続け、そこからコツをつかもうとする姿勢がある人です。
その時はいいボールでなくても、その姿勢に対して「ナイストライ」と言ったり、工夫している点を見て「さっきよりも良くなったね」と声をかけたり、「どうしたらもっと速い球を投げられると思う?」と問いかけて自分で考えさせることで、新人は「自分で考え、行動する」ことができるようになってきます。考えてやってみた結果、“ナイスボール”が出たら、本人のなかから「こうやっていけばいいんだ」という内発的なエネルギーがわいてくるでしょう。そのようなサイクルを作る支援をすることが、マネジャーに求められています。
なお、あくまで自分の経験ですが、女性のほうが、このような伴走型のマネジメントスタイルを得意とする人が多いようです。われわれの調査でも、女性マネジャーは男性マネジャーに比べて部下のコンディションや気持ちの変化などをよく見ていて、仕事の結果よりもプロセスを重視して指導する傾向にあることが分かっています。自分もそういうタイプだと思う方は、マネジャーだから管理しなきゃと思わず、自然体で新人に接すればうまくいくのではないでしょうか。