“Kia Kaha”(強くあれ)、“Be Kind”(優しくあれ)

一部の中小企業の経営者からは、ロックダウンの期間が長すぎたという不満の声も上がっていますが、4月末に行われた国内の世論調査によると、調査対象者の87%が政府のパンデミック対策を支持しています。

記者会見やソーシャルメディアで、アーダーン首相は「Kia Kaha(キアカハ)」「Be Kind」(優しくあれ)という言葉を繰り返し使っています。Be Kindは、他人に対してだけでなく自分に対しても優しくあれという意味が込められています。

Kia Kahaは、2019年3月にクライストチャーチのモスク(イスラム礼拝所)で起こった銃乱射テロ事件の後も首相が使っていた言葉で、マオリ語で「強くあれ」という意味です。この事件のとき、アーダーン首相はイスラム教徒の女性がかぶるヘジャーブ(スカーフ)を身に着けて遺族を訪問し、直ちに銃規制を強化する法律改正を行っています。

ロックダウン中も、首相の「Kia Kaha」と「Be Kind」という呼びかけで、みんなで協力して困難を乗り越えようという一体感を持てたように感じます。そしてこの2つの言葉は、コロナ禍に対するアーダーン首相の姿勢を象徴しているように思います。ニュージーランドの危機対応は、政策とコミュニケーション、リーダーの姿勢や国民への思いのすべてがかみ合ってこその成功だったのではないでしょうか。

写真=Avalon/時事通信フォト

りん みゆき(りん・みゆき)
ニュージーランド・香港在住ライター

ニュージーランドと香港を拠点にライター、通訳として活動。雑誌、機内誌、情報誌の寄稿多数。著書『海外のいろんなマラソン走ってみた』など。海外書き人クラブ会員