「厳しく、素早く」の政策が奏功

3月26日から4月27日までは、完全ロックダウンの状態で最も厳しい「レベル4」とされ、その後5月13日まではデリバリーや一部のビジネスを再開可能とする「レベル3」に引き下げられました。この頃には、感染者数がゼロに近い日が2週間続いたため、5月14日からは「レベル2」となり、ソーシャルディスタンスを保ちながら、ほとんどのビジネスと学校が再開しました。

公園に掲示された、ソーシャルディスタンスの注意書き
公園に掲示された、ソーシャルディスタンスの注意書き

5月30日現在で、死者22人、感染者1504人。新たな感染者は1週間出ておらず、入院中の感染者はゼロになりました。アーダーン首相の、「厳しく、素早く(Go hard, Go early)」戦略は、国民に高く評価されています。

 

丁寧な説明と、迅速な経済支援

アーダーン首相は、ロックダウンの発表から5月22日までの約2カ月間、平日はほぼ毎日記者会見を行い、その様子はテレビやソーシャルメディアで配信されました。会見は手話通訳が付き、英語とマオリ語の挨拶で始まります。

会見には、アシュリー・ブルームフィールド保健局長が同席し、科学的な知見をもって感染者数や感染経路を説明。ロックダウンにともなう行動の制限についても、4つのレベルごとに具体的な例を挙げてわかりやすく伝えました。例えば「レベル4」では近所のジョギングは良いが、車に乗って登山道に行くのは禁止、「レベル2」では、レストランが再開する際は、Seated(着席して飲食する)、Single Server(1つのテーブルについて、対応するスタッフは1人に限定させる)、Separated(テーブルとテーブルの距離を空ける)の「3S」を守るよう求めました。

ロックダウン中、自宅の郵便受けに入っていたチラシ。行動制限についての説明のほか、経済支援申請の連絡先や、暖房器具などが必要な場合の入手方法、不安やストレスを感じた場合の相談窓口などが書かれている
ロックダウン中、自宅の郵便受けに入っていたチラシ。行動制限についての説明のほか、経済支援申請の連絡先や、暖房器具などが必要な場合の入手方法、不安やストレスを感じた場合の相談窓口などが書かれている

ロックダウンによって収入が減少する国民にも、迅速に対応しました。48時間後のロックダウンを予告した翌日の3月24日には、給与補助金について説明。収益の減少などの条件に合致する企業や自営業者は、3月26日からの12週間について、週20時間以上勤務する従業員1人あたり週585.80NZドル(約3万8000円)、週20時間以下の従業員については1人あたり週350NZドル(約2万3000円)が支払われました。条件を満たしていれば、申請の2日後には口座に振り込まれていたそうです。この給与補助金制度は延長され、6月10日以降は、前回とは異なった条件で8週間分が支給されます。

また4月15日の会見では、自身と官僚の報酬を半年間、2割カットすると発表しました。ここで首相は、ロックダウンで多くの国民が経済的に苦しんでいることについて、「みなさんが苦しい思いをされていることを、痛切に感じています」と述べ、「この報酬カットで、政府の財政状況が大きく好転するわけではありません。しかし、誰もが人の命を救い、新型コロナウイルスを撲滅するために行動していることに対し、賛同と感謝の意を表すために決めました」と話しました。

警戒レベル引き下げを発表する会見では、国民に感謝と労いの言葉をかけ、「この努力が無駄にならないよう、次のレベルでも規則を守りましょう」と呼びかけました。科学的な根拠を伴う丁寧な説明や、迅速な経済支援を伴った政策に、納得して従った国民が多く、目立った違反もなく行動制限に従う姿が見られました。