コロナ禍でも売り上げを伸ばせる人と組織の特徴

私達が行ったアンケートでは、リモート営業で「困っている人」「困っていない人」の割合は、男女ともに6対4ほどでした。

両者の行動を分析してみると、一番の差は「顧客や取引先にオンライン商談を積極的に勧めている」かどうかでした(図表1)。

モート営業に「困っていない人」は何が違うのか

「とても困っている」という人たちは、コロナ禍の4月、リモート営業で実践していた工夫の1位は、「顧客とコミュニケーションの数を多くしている」でした。これはある意味、正しい営業方法かと思います。いわゆる、顧客との接触回数を増やして信頼関係を強くすることです。

一方で、「困っていない」人たち、つまり早い段階でリモート営業に適応してリモート営業を順調に進めていた人の約半数は、さらにオンライン商談を顧客先に積極的に勧めていました。率先して新しい営業スタイルにチャレンジできる組織や個人が、コロナ禍でも売上を上げていたのです。

こういった人たちは、「お客様のために」という思いで動いているという共通点があります。

オンライン商談を提案しても、最初は「外出自粛が解除された後でいいから」「落ち着いたときでいいから」と断れられることが多いわけです。そこですぐに諦めたり、逆に食い下がったりするのではなく、「緊急事態が解除されても、世の中が完全に元に戻るわけではありませんよね。お客様の将来のためにも、私たちと一緒にこの変化に適応していきましょう!」という姿勢でお話すれば、受け入れてもらえる可能性も高まるのです。実際に、顧客先にオンライン商談を提案しても、受け入れられるケースのほうが多いのです。

リモート営業はコロナ収束後も止まらない

コロナ禍をきっかけに一気に広まったリモート営業ですが、事態が収束してもこの動きが止まることはないでしょう。

私達の調査では、今後リモート営業のニーズが増えると考えている人が88%もいました。営業担当者自身が、新しい営業スタイルの可能性を感じているのです。

これからは、営業の常識だった「お客様の元に通う」ことそのものが壊れ、非対面のコミュニケーション方法やツールを使いこなしていくことが必須になっていくでしょう。

ただし、リモートの限界もあります。提案内容や商材によってはリモートで完結できるものもあります。しかし、とても高額な取引や、実際に見て確かめていただかないとクレームになりやすい商材など、対面でお会いして信頼関係を作ることが欠かせないケースも多くあります。

アフター・コロナの時代には、リアル訪問(対面)とリモート(非対面)の「ハイブリッド」な働き方や営業が主流になっていくでしょう。自社と取引先の状況などに合わせて臨機応変に、それぞれの良いところを活かしてやっていくことが重要になっていくのだと思います。

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太田 彩子(おおた・あやこ)
一般社団法人 営業部女子課の会 代表理事Founder

1975年生まれ。リクルートHot Pepper創刊に携わり、営業として社内MVP制度で複数回表彰を受ける。その後、2006年べレフェクトを設立。人材開発コンサルタントとして女性営業を中心に5万人以上を支援してきた。09年より営業女子のためのコミュニティ「営業部女子課」を全国で展開、勉強会やイベントを多数開催している。著書に『売れる女性の営業力』(日本実業出版社)、『1億売るオンナの8つの習慣』(かんき出版)、『営業女子 働き方の基本がわかる教科書』(プレジデント社)などがある。内閣府特命担当大臣表彰「平成28年度女性のチャレンジ賞」受賞。日本政府「WAW!」アドバイザーズ。株式会社コナカ社外取締役、アライドアーキテクツ社外取締役。早稲田大学卒業。筑波大学大学院修了(カウンセリング心理学)。