社長自ら飛び込み営業で販路を開拓

子供用ミシンは、従来の工業用品ではなく「玩具」の領域でした。ゆえに販路の開拓も、山崎さん自身が「飛び込み」で行ったとのこと。

発売を4カ月後に控えた15年6月、新大阪から新幹線でまず山崎さんが向かった先は、関東にある玩具小売大手の企業本社。まったく面識がない相手に、「よろしければ、この場で発注をかけてください」と頼み込み、仮受注を決めた。その直後、今度は玩具の大手流通企業に向かい、「あの小売大手が、仮発注してくれたんです」と訴え、初回で6000台の注文を取り付けたそうです。

ここまで急いだのは、この年のクリスマス商戦を「勝負時」と考えていたから。11月に入れば、親や祖父母が子や孫のプレゼントにと、子供用ミシンを買ってくれるだろう……この狙いが功を奏し、初期に準備した2万台以上はたちまち売り切れになりました。

重い、邪魔、ダサい、難しい……真逆のミシンを作れないか

その後、山崎さんの元に、子供用ミシンを購入したママたちから「ある声」が寄せられ始めます。それは、「うちの子がミシンやる(使う)のを見て、私も久々にやりたくなってきた!」といった声。

「昔のミシンを押し入れから引っ張り出して使い始めたママからは、『ミシン針が危ないから、子どもが寝てからでないと使われへん』などの悩みも寄せられました。また、妻の友達(ママ友)たちに話を聞くと、旧来のミシンに対して、『重い』『邪魔』『ダサい』『(扱いが)難しい』など、ネガティブワードが次々と出てきた。ならば180度“真逆”なミシンを作れば、きっと売れるはずだと考えたのです」

真逆なミシンとは、コンパクトで軽くておしゃれで、しかも扱いが簡単なミシン。デザイン家電のように部屋に飾っておいてサッと使えるような、まったく新しい観点の商品を出せば、売れるに違いない……。

山崎さんがそう確信したのには、もう1つ大きな理由がありました。自分を「一顧客」に置き換えたとき、すなわち、ミシンの購入を「自分ごと」として捉え直したとき、「自宅にミシンがあれば良かったのに」と痛切に感じる瞬間に気づいたからです。