前置胎盤と診断されたら、少量の出血にも注意
検診時、医師は胎児だけでなく、胎盤の位置も見ています。胎盤が低めだと言われた場合は、日頃から激しい運動は控えめにする必要があるそう。
「胎盤が低い場所にあると、おなかが張ったときなどに胎盤の一部がはがれて出血してしまうリスクがあります。少量出血ならばすぐに赤ちゃんに大きな影響はありませんが、「警告出血」と呼ばれ、少量の出血で痛みが伴わなくても、その後、大出血につながることもあるので注意が必要です。そのため、少量出血が続く場合は管理入院をする場合もあります」
もし胎盤がはがれて大出血となれば、妊娠週数や状況によりますが、緊急で帝王切開をしなければならない場合があります。胎盤が低めと医師から言われていたり、前置胎盤と診断されている人は、少量の出血でも放っておかずに病院を受診しましょう。
「胎盤が正常の位置にあるのに、出産前に胎盤がはがれてしまうこともあります。これは常位胎盤早期剥離といわれる症状です。喫煙者は、常位胎盤早期剥離のリスクが非常に高まることが知られています。ただし前置胎盤の方は、喫煙をしていなくても出産前の胎盤剥離のリスクがあり、慎重に経過を見ていく必要があります」
経膣分娩にこだわりすぎないで
高齢出産では、帝王切開率が高まることもわかっています。40歳以上の初産の場合は、帝王切開が必要となるケースは30代以下と比べて2倍に増加するという報告も。
「高齢で帝王切開が増える理由は、加齢にともなういくつかの要素が関わっています。加齢と共に婦人科に限らずもともとの病気がある人の割合が多かったり、妊娠高血圧症候群や前述の前置胎盤も増加します。また子宮の筋肉の加齢に伴う伸縮性の低下なども考えられます。この場合は陣痛がじわじわ続いていたり、破水もしたのに、子宮の出口がなかなか開かききらず、赤ちゃんは降りて来られません。お産が長引くと体力の消耗も激しいうえ、子宮内の感染リスクも高まり赤ちゃんの心拍も落ちやすくなります。お産が進まず、分娩が始まったのに停止または遷延してしまっている場合は、帝王切開に切り替えるという判断も必要です」
出産で何より大切なのは、母子の安全。自然分娩を予定している場合でも、帝王切開の可能性があることも頭に入れておくといいでしょう。
「とはいえ、お産の真っ只中で『緊急帝王切開にしましょう!』と言われたら、パニックになるのも当然。詳しい状況は少し違いましたが、産婦人科医の私ですら、自分の出産のときに『次の陣痛で産まれなかったら帝王切開に』と言われたときには、陣痛の痛みもありますし、内心はパニックになりかけました。いろいろなパターンを想定して心の準備をしておき、分娩の際は冷静に判断してくれる産婦人科の医師を信頼し、納得したうえでお任せすることが大事だなと思いました」
自然分娩を予定している場合でも、帝王切開の流れや手術後の予定について、ひと通り予習をしておくといいかもしれません。