希望する社員は永久に在宅勤務

とりわけ、ツイッターが先日発表した「希望する社員は、永久に在宅勤務を認める」との報道は、世界的に衝撃を与えた。それに先立ち、フェイスブックやグーグルは今年後半までの在宅勤務を容認している。装置型産業とは様相が異なるIT業界は、迅速な意思決定に加え、お家芸であるインターネットを駆使する形で、変化に強い体質を見せつけている。

以前の記事(「災害でも会社に向かう日本人の異常な忠誠心」)で記したが、そもそも米国では、柔軟な働き方が許容されており、災害時はもとより、通常時でもWFHは一般的だった。ただ、あくまでも限られた日に実施していたのであって、オフィスや工場などに出社するのが基本。今回のように、連日自宅での労働を余儀なくされるのは、ほとんどの人にとって未体験だ。

慣れない企業ではデメリットも噴出

では、米国に進出している日系企業は、どのように対応しているのだろうか。

日本貿易振興機構(JETRO)が3月下旬、4月上旬と2回続けてアンケートを実施。初回調査(回答905社)では、9割の企業が在宅勤務に踏み切りつつも、うち8割の企業で「意思疎通の低下」や「社員の勤務状況の把握が困難」などと何かしらの支障が出ている実態が浮かび上がった。自由記述では「皆が在宅勤務をされると困る」という本音も出た。

4月分(1048社が回答)時点では、42州が自宅待機令(必要不可欠な事業を除く)を出していたことを受け、過半数の企業が在宅勤務を義務付けられており、とりわけ被害が深刻なニューヨーク州、ニュージャージー州などの北東部では7割に上った。回答した企業からは「営業活動が制約される」「コミュニケーション不足により、生産性が低下している」などと負の影響を懸念する見方が上がる。

ここ2カ月間、WFHをめぐり米国内で指摘されている点は、①仕事が家庭と境目がなくなり、ワークライフバランスの確立が困難、➁生産性については賛否両論、③家族がいない人を中心に孤立しがち、④メンタルヘルスの拡充が重要、⑤通勤時間がなくなり、時間を効率的に使える――に、おおむね集約される。これは、主として労働者側から見た観点であって、経営層側によるスタンスはJETRO調査の傾向とそれほど変わらないとみられる。