コロナ後もマンハッタンのオフィスに人は戻らない
ニューヨークタイムズによると、マンハッタンで大規模なビジネスを展開するバークレイズやJPモルガン・チェース、モルガン・スタンレーの3社幹部は、それぞれのオフィスビルで抱えていた数万人の全社員が「コロナ後」も在宅勤務が当たり前になり、オフィスに戻る可能性は極めて低いと判断したという。毎年値上がりするマンハッタンのビル賃料を圧縮できれば、州や市に投入する税金が削減され、社員の安全も確保できる。決して悪いことばかりではない、と思い知らされたとの見方を紹介している。
こうした企業が続出すれば、不動産業をはじめ、ビジネスパーソンが買い求めるランチ、仕事後の楽しみとしていたディナーを提供するレストランをはじめ、各ショップへの影響は甚大だ。多くの人が行き交い、世界中からの観光客も合わせて活気に溢れていたマンハッタンのみならず、高層ビルが林立する米大都市のダウンタウンには空き室が目立つビルが増え、元通りに人が戻らないおそれがある。
今回のウイルス禍による在宅勤務の広がりは、単に勤労者一人ひとりの働き方を見直すという視点にとどまらず、豪華な本社ビルの在り方、高い賃料を払ってまで存続させるオフィスの存在を問い直す機会となっている。日本でも米国でも既に指摘されているポイントではあるが、在宅勤務のメリットに目覚めた米企業が実際に行動に踏み切った時、その影響は米国だけにとどまらないのは間違いない。
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1972年生まれ。埼玉県行田市出身。慶應義塾大学卒業後、共同通信社に入社。2005年より政治部で首相官邸や自民党、外務省などを担当。17年、妻の米国赴任に伴い会社の休職制度を男性で初めて取得、妻・二児とともに米国に移住。在米中、休職期間満期のため退社。21年、帰国。元コロンビア大東アジア研究所客員研究員。在米時から、駐在員の夫「駐夫」(ちゅうおっと)として、各メディアに多数寄稿。150人超でつくる「世界に広がる駐夫・主夫友の会」代表。専門はキャリア形成やジェンダー、海外生活・育児、政治、団塊ジュニアなど。著書に『妻に稼がれる夫のジレンマ 共働き夫婦の性別役割意識をめぐって』(ちくま新書)、『猪木道 政治家・アントニオ猪木 未来に伝える闘魂の全真実』(河出書房新社)。修士(政策学)。