こんな時だからこそ、頑張り過ぎない

また、学校が休みになったことで、勉強が遅れてしまうのではないかという不安も大きいと思います。いつもに増して「子どもの教育・子育ては自分が100%担わなくては」「完璧にやらなくては」と、肩ひじを張って頑張っている親御さんも多いのではないでしょうか。でも、ただでさえストレスの多い大変な時ですから、自分に対しても子どもに対しても、少しのんびり構えたほうがよいと思います。

「完璧にやらなくては」と思うと、どうしても子どものいけないところ、できていないことばかり目につき、マルトリにつながりやすくなります。まずは「私ってよくやってる!」と自分をほめてあげること。それから、子どももしっかりほめることです。

3つのコツで「ほめる子育て」に

「どうほめていいかわからない」という人は、次に紹介する3つのコツを実践してみてください。

1つ目は、「子どもの行動を具体的に言葉にする」です。遊び終わったおもちゃを片付けていたら、「遊んだ後のおもちゃを、丁寧に片付けてるね。すごいね」などと声をかけます。子どもがした良い行動でも、「こんなことをするのは当たり前」と、あえて言葉に出さないことは多いと思います。「脱いだ靴をきちんとそろえているね」「決められた時間にテレビを消したね」など、これまで言葉にしていなかったことでも言葉にして、子どもに伝えましょう。子どもは、「自分のしていることを、親が見てくれていた」とわかりますし、それが良い行動なのだとあらためて知ることができます。

2つ目は、「子どもの耳に入るよう、ほかの人との会話の中でほめる」です。例えば子どもが近くにいるところで、お母さんがお父さんに「今日は、自分からすすんで洗濯物をたたむのを手伝ってくれたんだよ。とても助かっちゃった」などと報告します。子どもは自分の行動を誇らしく感じ、直接ほめることの何倍も印象に残ります。

3つ目は、ほめ方というよりもコミュニケーションのコツになりますが、「繰り返し」です。これは傾聴、つまり聞き上手になるための方法の一つでもあります。子どもが言ったことを、そのまま繰り返します。例えば子どもが「算数のドリルを○ページやったよ」と言ったことに対して「算数のドリルを○ページもやったのね」と返す。子どもが「おさかなの絵がかけたよ」と言えばただ「そうなの」と返すのではなく、「おさかなの絵がかけたのね」と優しく声をかける。すると、親が自分の話をちゃんと聞いてくれていることがわかり、子どもは安心します。

こうした3つのコツを実践することで、子どもの行動も、親御さん自身の気持ちも変わり、マルトリも減らすことができるはずです。今は、一緒に過ごす時間が増えて、子どもとの距離を縮めるチャンスでもあります。ここで「ほめる子育て」に移行しておけば、コロナの後も、子どもとの関係をより良くできるはずです。

構成=大井 明子 写真=iStock.com

友田 明美(ともだ・あけみ)
小児精神科医

1987年、熊本大学医学部医学研究科修了。医学博士。同大学大学院小児発達学分野准教授を経て、 2011年6月より福井大学子どものこころの発達研究センター教授。同大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長兼任。2009~2011年、および2017年4月より日米科学技術協力事業「脳研究」分野グループ共同研究 日本側代表者を務める。著書に『新版 いやされない傷 児童虐待と傷ついていく脳 』(診断と治療社)などがある。