外出自粛でテレワークになり、文字通り24時間、休校中の子どもと顔を突き合わせる生活が続く。「イライラして毎日怒ってばかり」という人も多いようだが、子どものこころや脳の発達に詳しい友田明美教授は、「それは『マルトリートメント』(不適切な養育)につながることが多く、子どもの脳にダメージを与える可能性もある」と指摘する。どうしたら避けられるのだろうか。
母親に叱られる、かわいい女の子
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Hakase_)

ソーシャルディスタンシングは子育てに危険

新型コロナウイルス感染拡大にともなう休校や外出自粛が、長いところでは2カ月以上にもわたっています。私は福井大学医学部附属病院の子どものこころ診療部で、小児科医として外来も担当していますが、「親子が一緒にいる時間が長すぎて、溜まったストレスをどう解消していいかわからない」という、切実な悩みを抱えたお母さんがたくさんいらっしゃいます。

福井大学 子どものこころの発達研究センター 副センター長の友田明美教授(写真提供=友田明美氏)
福井大学 子どものこころの発達研究センター 副センター長の友田明美教授(写真提供=友田明美氏)

子どもの方も、友達に会えず外にも出られずストレスを抱えていますし、自分や家族が感染するのではないかという不安を感じています。子どもは、大人と違って不安やストレスの解消がうまくできませんから、親にべったりくっついて離れなかったり、必要以上にわがままになったり、頭痛や不眠などになるお子さんもいます。

ソーシャルディスタンシング(社会的距離拡大戦略)は、家の中という「私」空間と、家の外の「公」空間を隔てます。これは子育てには非常に危険な状況。ともに不安やストレスを抱えた親子が、「公」空間から隔絶されて長時間過ごすので、ストレスを増幅してしまいます。さらに、外出自粛が続く今の状況では、誰かに助けを求めることも躊躇ちゅうちょしてしまうでしょう。国連をはじめ、多くの専門家やNPOなどが、児童虐待やDVの増加を懸念しています。