1年分の生活費がある人は当面、積み立てを続ける

「1年分の生活費は確保できている」という人は、できればiDeCoをそのまま継続したい。言うまでもなく、自身で老後資金作りをすることは大事なことだし、所得控除も受けられるiDeCoは節税効果というメリットも大きい。

収入が減る不安があっても、1年分の生活費があるならすぐにピンチになる危険性は低いので、当面はiDeCoを継続し、収入減が現実味を帯びてきたら休止や減額を考えるといいだろう。

ここで注意したいのは、景気が不透明だからとって、安全重視の運用に切り替えないことだ。

iDeCoでは、取扱金融機関がそろえた投資信託や預金などの中から、自身で運用する商品を選ぶ。若い人ほど運用できる期間が長く、株式に投資する投資信託などを選ぶのがいいと考えられるが、株価が下がったり、経済動向が厳しくなったりすると、保守的な運用に切り替える人も少なくない。しかし、すでに積み立てている資金を投資信託から預金にシフトすれば、下がった時に投資信託を売ることになる。これから積み立てる分を預金などにすれば、投資信託を安値で買えるチャンスを逃すことにもなる。

毎月、少額ずつ、長期で積み立てると、「時間分散効果」によって投資にリスクが抑えられる効果が期待できる。すなわち、iDeCoではリスクを抑えた投資ができるので、安値の時こそ、しっかり積み立てを続けたい。これまで預金で積み立ててきた人は、投資信託への乗り換えを検討するのもいいだろう。

お金が心もとない人は減額や休止も検討

「生活費の1年分の預金はない」という人は、iDeCoの休止、あるいは減額を考えてみよう。

積み立てを停止する場合には、金融機関に「加入者資格喪失届」を提出すると、積み立てが停止できる。停止している間もそれまでと同様に口座管理手数がかかるほか、投資信託を利用している場合はそのコストがかかる。積み立てを休止しても、それまでに積み立てた分について、運用商品を乗り換えるなどの指示は可能だ。

もう1つの方法は掛金の変更だ。金融機関に「加入者掛金額変更届」を提出することで、年に1度まで可能となっている。減額の場合、最低金額は5000円で、5000円未満の積み立てはできない。

非常時には、資産の状況や家計の内訳を見直す好機といえる。いざというときに使えるお金がいくらあるのかを把握しておけば、安心できるかもしれないし、今後を考える材料にもなる。また貯蓄が心もとない人は、どうすれば貯蓄が増やせるか、家計を見直してみよう。Stay Homeの時間を活かしてお金について考える。そして、将来の自分に向けて、無理のない範囲でiDeCoを続ける、あるいは、はじめる、のが望ましい。

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井戸 美枝(いど・みえ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)

関西大学卒業。社会保険労務士。国民年金基金連合会理事。『大図解 届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください 増補改訂版』(日経BP)、『残念な介護 楽になる介護』(日経プレミアシリーズ)、『私がお金で困らないためには今から何をすればいいですか?』(日本実業出版社)など著書多数。