“在宅組”と“出社組”に分かれることの弊害

次に起きやすいのは、“在宅組”と“出社組”が混在する状態が続くこと。これが長引くと、両者の間にコミュニケーションの断絶が起きやすくなり、ミスや生産性低下につながっていく場合があります。このとき出社組になりやすいのが、比較的年配で勤務歴が20〜30年と長く、上層部の立場にある人々。

こうした人々は、仕事といえば出社するのが当たり前という環境の中でずっと働いてきたわけですから、若い人に比べて在宅勤務に抵抗を感じがちです。また、勤務歴が長いぶん立場も上で、プロジェクトなどに許可を出す、つまりハンコを押す機会も少なくありません。

それ自体は決して悪いことではありませんが、現在の状況を考えると「出社しないと仕事にならない」という意識は切り替える必要があるでしょう。なぜなら、上司が出社すると部下もつい出社してしまいがちになるからです。

例えば、上司が「君たちは在宅勤務をしてもいいよ」と言ったとします。でも、当の本人が出社を続けていたら、部下は忖度そんたくを働かせて在宅勤務に気兼ねを感じるようになってしまいます。部下が残業している上司に気兼ねして、帰りにくくなるのと同じですね。

上司が部下に「〜してもいいよ」と許可する形では、在宅勤務を選択した部下に不要な気兼ねが生まれてしまいます。そうすると、リモートワークにまつわる課題やその解決策も、部下からは提案しにくくなるのです。

「在宅してもいいよ」と言う上司がダメな理由

ひとつ例を挙げてみましょう。リモートワークでよく使われるTV会議は、在宅組1人対出社組1人ならいいのですが、出社組が同じ会議室にいる複数人で、かつPCが1台だけとなると、途端にやりにくくなります。これはWebカメラの性能にもよりますが、在宅組からは誰がしゃべっているのかわからない、全員の顔が見えないといった問題が起きてくるからです。

このとき、在宅組が部下で出社組が先輩や上司だったら、部下から「やりにくいのでPCは1人1台を使ってください」とは言いにくいもの。結果、出社組は在宅組のやりにくさに気づけず、皆で解決の手立てを考えることもできなくなってしまいます。

一般的に、在宅組は「リモートワークをさせてもらっている」という意識が強く、出社組に比べて弱い立場にあります。だからこそ、リモートワークは上司や会社全体で一斉に取り組むべきなのです。上層部には、「〜してもいいよ」ではなく「自分がする」という意識が必要だと思います。