物は買わないけれど思い出に投資

このように普段は驚くほど質素な生活をしているフランス人女性は多いのですが、計画的に貯めてきたお金はそのままにせず、計画的に使います。シルビーの楽しみはフランス人のご多分にもれず、夏のバカンス。大手自動車メーカーに勤める夫ともに8月は丸々お休みなので1年前から入念に計画を立てます。

子供が4人いるのでホテルではなく戸建てを借りることが多く、AirBnBもよく使います。旅行中も外食はほとんどせずに自炊で節約は続きます。ただし時には、自分へのご褒美に、自分の時間もできるし、子供達もそれぞれ楽しめる、少し割高なクラブメッド(フランス発祥の、食事やアクティビティなどがパッケージされたリゾート施設)も利用します。なんと言っても三度の食事の心配をしなくていいのはこの上ない贅沢なのです。

エキゾチックな場所に惹かれ、数年に1回、アジア、南アメリカなどの秘境を旅しすることも。こういった海外旅行の資金は数年かけて貯めていきます。子供が小さい時は、夫の両親に子供を預け、夫婦でインドネシアのイリアンジャヤへ熱帯トレック、ヒマラヤ秘境トレックを楽しんだといいます。ちなみに新婚旅行はエクアドルのキトーでした。

物は残らないけれど、思い出は死ぬまで心の中にと、旅行が終われば、次の年にどこに行こうか、世界地図を眺めるのが一番の楽しみだそう。こうやってバカンスで一年分の充電をしてフランス人女性はまた元の日常に戻るのです。

日本人にとっても、これからの不透明な状況下において、ロンドン、シティで働く女性のように貯金の代わりに投資、不況の波に備え転職の準備をしておくことは不可避かもしれません。節約しているといっても、辛さが全く見えないフランス人。その典型である我が義姉シルビーのように、お金について自分のポリシーを貫き、他人の意見や周りに影響されず我が道を行っているだけなのです。本人たちは倹約している意識もなく、お金をかける意味を感じられないと判断したモノには元から興味を持たないようにしているのです。ヨーロッパ人にとっては節約とは苦行ではなく、一つのライフスタイルそのものだと言えるでしょう。

写真=iStock.com

モラティーユ 康子(もらてぃーゆ・やすこ)
イギリス教育アドバイザー、コンサルタント

青山学院大学卒業、外資系金融にて東京、ロンドンで働く。出産後コルドンブルーロンドン校を卒業、自宅で料理教室を開く。その後夫の転勤に伴い、東京、シンガポールへと移り住む。子供2人はイギリスのボーディングへ。