パリジェンヌは本当に服を持たない
一方、フランス人女性も独自のマネーリテラシーを持っています。私はフランス人の夫と結婚していますが、夫の姉シルビーは、パリにあるフランスの大手銀行で働いています。アメリカやイギリスと比べ、育児など福祉は大変充実しています。義姉は子供を4人産んでいるので4回育児休暇を取ったことになりますが、流産しやすいという医師の診断書のお陰で妊娠発覚から産後まで、毎回有給での自宅待機を強行していました。その割にはいつも無痛分娩の安産で産前産後ともにいたって元気だったのですが……。
復帰後も、フランスでは学校が水曜日休校なため、彼女もそれに合わせてお休み、週休3日です。羨ましい話ですが、福祉が充実しているだけあって税金が高いのでとにかく払っている分の元を取りたいと、顔を会わせれば国からの補助でどんな得をしたかと盛り上がるのがフランス人女性の常です。そんな恵まれた環境にあっても、子供も4人いるし、もっと広いマンションに移りたいし、バカンスも大事だし、と義姉はせっせと節約に励んでいます。
『フランス人は服を10着しか持たない』という本が日本でもベストセラーになりましたが、義姉の仕事着は本当に春夏と秋冬でそれぞれ2パターンずつ。1年を通じてGAPの白い半袖Tシャツを毎日着用(同じ物を6枚持っている)、季節毎にボトムは2種類ずつ。冬はTシャツの上に着るジャケットが2種類。コットン100%のTシャツは漂白剤を入れて60度でジャブジャブ洗えるし、傷んできたらまた同じのを買えばいいと恐るべき合理性です。忙しい朝にコーディネートに頭を悩ますことがない時間活用術とも言えるでしょうか。
仕事のジャケットの色は明るめに、暗めのボトムでバランスを取ります(なお休日はボトムがジーンズに変わるだけです)。プレゼンテーションがある日やクライアントに会う予定がある時は、このコーディネートに誕生日に貰ったエルメスのスカーフがプラスされるだけです。靴はプレーンな黒のパンプスですが高い物は買わず、ダメになるまで履き倒してまた新しい物を購入します。冬は膝下ブーツで。見えないからと伝染したタイツも捨てずに洗って履く……日本人から見るとすごい割り切りです。
平日は帰宅が19時前後のシルビーですが、多くのフランス人と同じく夕食づくりに火は使いません。前菜からメイン、チーズにヨーグルトまで付くフランスの給食があるため、子供達の夕食は、出来合いのスープに野菜スティックにチーズ、サラダにハムに茹で卵にヨーグルト、といったような簡単なメニューです。夕食はまず子供たちに食べさせた後、必ず旦那様と2人でいただくのがシルビー流ですが、メニューは毎日同じで、すでに洗ってあるサラダとチーズ。日によってスモークサーモンかツナの缶詰がつきます。
冷凍食品も大活用。ポテトピュレー(マッシュポテト)の粉末をUHTミルク(高温殺菌牛乳。室温で保存できる)で溶いて電子レンジへ入れるだけ。彼女の子供はじゃがいもから作ったピュレーを家で食べたことがありません。ただし、フランスのインスタント食品は美味しいので問題ないのかもしれませんが。