毎日10キロ走って体重管理
【原田】文章についても教えてください。りょうくんの場合、Twitterは「まじでこの世の全ての○○好きに教えてあげたいんだが」で始まる定型文ですよね。定型文にしたのはなぜでしょうか。
【りょうくん】毎回文章を考えていると手が回らないので、単純に効率の問題ですね。インパクトのある定型文は拡散もされやすいので、一石二鳥と言えるかもしれません。
【原田】確かに、りょうくんはほぼ毎日投稿していますね。この投稿量だとお店を回るだけでも大変だと思いますが、どんなスケジュールでこなしているんですか?
【りょうくん】感想を聞くために女性と一緒にいくので、互いのスケジュールが合う日に撮りだめをしています。1日に6~8軒回って食べまくって、その後2日間は胃を休めるためにサラダだけという感じですね。本当は1日3軒ぐらいにしたいんですが、相手の都合もあるから仕方ありません。でも、こんな生活だとどうしても太っちゃう(笑)。だから毎日10kmぐらい走っています。
【原田】裏ではそんな苦労があるんですね。でも、どんなに大変でもやはり自分で確かめて、全力でお勧めできる店だけを載せていきたいと。
【りょうくん】そうなんです。「りょうくんグルメ」は、もともとフォロワーとの信頼関係を一番大事にしてきました。自分で確かめる、信頼を裏切らない、嘘をつかないといった部分ですね。今はこうして仕事になっているわけですが、そこはずっと変わらないです。
PRの仕事も、フォロワーに勧められるものを厳選
【原田】ただ、インフルエンサーという立場になると、企業からPRのオファーがたくさん来るようになりますよね。その場合はどう対応していますか?
【りょうくん】フォロワー数が多いほどPR依頼も増えるので、選べるようになるんですよ。僕の場合は、バズる条件に合致していて、かつ自分で食べに行ってお勧めできると思った依頼しか受けていません。本当においしいと思った店しか載せないので、フォロワーとの信頼関係はキープできていると思います。
【原田】SNS上の嘘はばれると言われていますが、やはり「正直さ」をポイントにしているんですね。
【りょうくん】フォロワーを増やすには、楽しませることに尽きると思います。フォロワー数や「いいね」の数を増やしたい気持ちが先行している人も多いようですが、それよりも楽しませる方法を試行錯誤することが大事。僕も、自分の感覚ではお勧めできると思ったものでも、フォロワーはそうは感じないかもしれないと思ったら、100%フォロワーを優先しています。
SNSには、インフルエンサーでなくても、とてもいい投稿をする人がたくさんいます。僕も最初はそれを真似ていたので、まずはSNSをながめてまねることから始めてみてはどうでしょうか。
【原田】写真も文章も、フォロワーを優先に考えることが大事なんですね。楽しませること、そして信頼関係を大事にしていると聞いて、りょうくんの今の影響力はフォロワーの満足度を追求し続けた結果なのだと実感しました。
企業でも個人でも、SNSをやっていれば誰もがバズる秘訣を知りたいところでしょう。でも、その機会は偶然や奇跡を待っているだけでは訪れないようです。りょうくんの場合も、トライ&エラーとフォロワーの反応データを積み重ねてきたからこそ今があるように思います。膨大なフォロワー数という成果を得た今、彼は次の展開をどのように考えているのでしょうか。次回は「りょうくんグルメ」の今後について探っていきたいと思います。
1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。
2018年3月よりSNSで投稿を開始。「まじでこの世の全ての○○好きに教えてあげたいんだが」という定型文が話題になり、1年半後には総フォロワー数が90万人を突破。流行をキャッチし拡散する力が飲食店からも信頼され、現在では新しい「映えるグルメ」の仕掛け人として注目されている。4月1日、著書『まじでこの世の全てのSNSでバズらせたい人に教えてあげたいんだが。』を発売。