金銭的な補償ではカバーできない負担とストレス
安倍首相による「要請」発言の翌28日には、筆者の息子が通う私立中学校からも休校決定の知らせが届き、いよいよ筆者自身も一斉休校の当事者となった。公立校だけでなく私立校も要請に応え、いよいよ本当に全国一斉休校が始まったのだ。
途端に、SNSにもメディアにも、子育て中の親があげる悲鳴があふれた。
学校機能が停止するということは、日中に学校へ行き、給食やお弁当を食べ、夕方や夜に帰宅する子どもたちの生活リズムと、それを前提とした働き方や活動をしている大人たちの生活リズムを一斉に崩すことだった。
それ自体は想定されていたことだ。安倍首相は行政機関や企業に「子どもを持つ保護者の方々への配慮」を求めたうえで、「こうした措置に伴って生じる様々な課題に対しては、政府として責任をもって対応する」と語った。子どもたちのケアや保育が必要となった親が仕事を休まざるを得なくなった場合の経済的損失をカバーする「休業補填」の議論も、それが十分か否か異論はあるにせよ進む。
だが金銭的な補償ではカバーできない、澱のように溜まる負担感とストレスが、子どもを持つ親や祖父母、中でもやはり母親たちを直撃しており、SNSやメディアには毎日のようにリアルな声が上がる。
「子供を公園に連れてきちゃダメ!」と見知らぬおじいさん
「小さな子どもが同じ部屋の中にいる状態でのリモートワークなんて、事実上機能していない」
「原則開園と言われる保育園、我が子の民間保育園は衛生と物資不足を理由に閉園中」
「家の中に閉じ込められた子どもの発散のためにと公園へ連れて行ったら、『子どもを連れてきちゃダメだ、家の中にいなさい』と見知らぬおじいさんに叱られた」
「共働きの夫婦ともに実家から遠い我が家、子どもの預け先探しに奔走している」
「この時期だけと頼み込んで、実家の母に上京してもらった。祖父の介護もあるのに……」
学齢期の子どもが複数いる家庭では、なおさらだ。
「コロナが騒がれ始めた頃は、上の子の高校受験真っ最中。厳戒態勢に近い緊張感で、毎日薄氷をふむ思いで過ごしました。ようやく終わったと思ったら、卒業式は教師と生徒のみで開催との知らせ……」
「毎朝、仕事に出かける前に子ども2人の昼食と夕食、今日やっておくべき宿題の指示をして出かける。子どもだけの長時間留守番で、心配は尽きない。さすがに親の疲れもピークです」
「リモートワークの夫と2人の子どもだけで3日間過ごしてもらったら、家の中はカオス、夫が『仕事にならない』と音をあげて不機嫌に。結局、私も在宅にスイッチ。“イクメン”を自負してきた夫ですが、連日子どもと缶詰になって全ての世話をするのは事情が違う。彼も初めて専業主婦の気持ちを理解したんじゃないかな」