安倍政権の対応に海外の厳しい目が向けられている
海外メディアも日本の検疫が失敗した理由について厳しい目を向けている。特に44人が感染、約330人をチャーター機2機で帰国させた米国のメディアは日本のやり方を徹底的に批判している。
米ABCテレビは「第二の感染中心地が日本の港につくられつつあり、憂慮すべき事態」と警鐘を鳴らし、米紙ニューヨーク・タイムズは「日本政府の対応は公衆衛生危機の際に行ってはいけない対応の見本」と批判する専門家の意見を紹介した。
もともとクルーズ船ではノロウイルスの感染が頻繁に起きており「海に浮かぶ培養皿」と呼ばれるほど感染症には脆弱だ。しかし船内では世界保健機関(WHO)が1月30日に緊急事態宣言を出してからもパーティーが開かれていた。
米国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・フォウチ所長は米USAトゥデーに「クルーズ船上で人々を安全に検疫しようという最初の考えは無理ではなかった」としながらも「検疫のプロセスが破綻した」と指摘し「あまり厳しいことは言いたくないが、これは失敗だ。検疫が失敗し、多くの感染者を出してしまった」と話している。
英キングス・カレッジ・ロンドンの感染症の専門家ナタリー・マクダーモット博士は「明らかに検疫は機能していない。この船は現在、感染源になっている」と手厳しい。
「船内での検疫の実施方法、空気浄化、客室へのアクセス、廃棄物の処理方法を理解する必要がある」
「私たちが馴染みのない別の感染経路が存在する可能性はあるものの、乗員や乗客がウイルスで汚染された表面を触るのを防ぐディープクリーニングが適切に行われていれば、検疫が機能しなかったはずがない」
感染させるために培養皿の中に閉じ込めた
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは「ダイヤモンド・プリンセス」に乗客として乗船していた米テネシー州の総合医アーノルド・ホプランド氏(75)から取材。ホプランド氏は「1日10回も乗員が食事やトイレットペーパー、チョコレートを持ってきた」と証言している。
乗客はマスクもせずにバルコニーに洗濯物を干し、バルコニー越しに乗客同士が話し合っていた。これでは検疫にはならないと注意したホプランド氏の妻は感染し、部屋の世話係だった乗員は重症化していることが分かったという。
ホプランド氏は「私が感染していなかったことが驚きだ。ウイルスは野火のようにこの船に広がった。彼ら(日本政府)はわれわれを感染させるために培養皿の中に閉じ込めたというのが私の推論だ」と語っている。
AP通信に対して英イースト・アングリア大学のポール・ハンター医学部教授は「私たちが考えていたほど人々は他の人々から隔離されていなかったと思われる。ウイルスの継続的な拡散は手順を守っていなかった可能性がある」と指摘している。
「船舶環境で検疫を実施することは困難だ。3700人以上を船内で検疫しようとすることはロジスティクスとして無理があった」