幼稚園の先生は相手を主体にした会話のプロ

一方幼稚園の先生たちは、子どもたちに何かを伝える際は、相手に100%意識を向けています。自分がどう思われるかという、意識が自分に向いた伝え方とは真逆の姿勢です。幼稚園では、子どもたちに何かを指示するとき、できるだけ具体的に例を示しながら伝えます。5歳児になるとだいぶ読み書きができるようになりますが、まだボキャブラリーは少なく、先生の指示を誤って解釈することが多いからです。

人は自分の器の分でしか物事を理解できません。知らないこと、経験したことがないことは、どんなに詳しく説明したとしても、すべてを把握することは難しいのです。たとえば、注射の経験がある子どもは、注射がどのようなもので、どの程度痛いかを知っていますが、経験したことがない子どもは、痛みの程度を想像できません。「とんでもなく痛いに違いない!」と思い込んだ子どもは異常なほどに、注射を怖がることがあります。実際は、針が刺さる際にチクッとする程度なのですが、「痛いに違いない」という思い込みの強さから、実際以上に痛みを感じてしまうこともあります。知識や経験があればすぐに受け入れられることが、知らないことで、実際とは違うように解釈したり、想像したりしてしまうことがあります。

相手の経験と知識に合わせる

何かを伝えるときに最も大切になるのは、相手に合わせる技術です。これは、相手に合わせる「思いやり」と置き換えてもいいかもしれません。そのためには、自分に意識を向けたままで一方的に話すのではなく、相手の知識や経験に合わせることが大切です。そして、伝える内容を明確にすることも重要なポイントです。幼稚園では、子どもたちに「しっかりと挨拶しましょう」と伝えたい場合、子どもたちに「しっかり」の定義をまず伝えなければなりません。そうしなければ、ある子は「大きな声=しっかり」と解釈するかもしれませんし、「小さな声でも、会うたびに挨拶すること=しっかり」と理解する子もでてきてしまいます。子どもによって解釈が分かれないようにするためには、「しっかり」の意味をかみ砕き、具体的に例をあげて示す必要があるのです。

①相手の目をしっかり見て、
②相手がちゃんと聞こえるくらいの大きな声で、
③元気よく挨拶しましょう。

たとえば、このようにポイントを伝えて、これが、「しっかり」の意味ですよと示すのです。加えて実際にどれくらいの声で挨拶をしたらいいのか、先生が必ずお手本で示し、イメージをしやすくします。