「伝え方」のミスで取り返しがつかなくなる前に

こうした伝え方の基本は、私たち大人も同様に気を付けなければいけません。幼稚園の子どもたちは、もし先生の伝え方がわかりにくいと、すぐに「わからなーい!」と声を上げてくれます。空気を読まずに、わからないことは、わからないと率直に伝えてきてくれます。だから、幼稚園の先生たちは、自分の伝え方がまずかったとすぐに理解できるので、どんどん伝え方も工夫していき、結果として上達するのです。

森田晴彦『MBAでは教えてくれない リーダーにとって一番大切なこと』(彩流社)

でも、大人の世界ではそうはいきません。わからないのは聞く側の責任という意識が強く、例え理解できていない話でも、わかったふりをしてやり過ごす、なんてことさえ起きてしまいます。「伝え方」のミスは、後から修正する程度で済むこともありますが、場合によっては取り返しのつかない事態にもつながります。職場のトラブルの多くはコミュニケーション不足によって引き起こされるもの。だからこそ、私は人に何かを伝えるとき「これは5歳児でも通じるか」を基準に考えています。5歳児というと極端に思われるかもしれませんが、それくらいにまで落とし込んで、やっと大人にもスムーズに伝わるものだと私は感じています。

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森田 晴彦(もりた・はるひこ)
川越なかよし幼稚園副園長

立教大学法学部卒業、立教大学大学院経営学研究科修士課程(MBA)修了。東証一部上場金融機関勤務、一般企業経営を経て、幼稚園の副園長に就任。母親が園長を務める幼稚園の事業再生に取り組むも、壁に当たる。幼稚園での、子どもたちと教師たちの関わりを見つめるなかで、マネジメントや組織運営がうまく行かない理由は、最新の高度な経営理論や経営手法が実践できていないからではなく、幼稚園の子ども達が日々の生活で大切にしている思いや約束事、ルールを実践できていなかったからであることに気づき、幼児教育と組織マネジメントを融合する経営理論を構築し実践する。現在、英語教育を特徴にした幼稚園作りを行い、5年間で園児数を2.5倍にまで増やす。船井総合研究所の従業員満足度調査において職員職場満足度100%達成。8年前は一学年9人だった園児数をV字回復させ、10年連続赤字の組織が今期で7年連続黒字達成。経営者に向けてマネジメントセミナー等も実施している。三児の父。