リーダーにとって一番大切な役割は「幼稚園で学んだこと」をチームに徹底して浸透させること。そう語るのは潰れかけた幼稚園をV字回復に導き、現在は数多くの経営者向けセミナーの講師を務める森田晴彦さん。森田さんは、大学院にてMBAを取得して一部上場金融機関に勤務した後に一般企業経営を経て、なんと幼稚園の副園長に就任したという異色の経歴の持ち主。MBAではなく幼稚園の中で学んだマネジメントの本質とは――。

※本稿は、森田晴彦『MBAでは教えてくれない リーダーにとって一番大切なこと』(彩流社)の一部を再編集したものです。

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独りよがりの言葉では伝わらない

物事を伝える際に、意識が自分に向いているのか、それとも相手に向いているのか、皆さんは考えたことがありますか? 私はずっと長い間、自分に意識を向けて、人とコミュニケーションをとってきたように思います。つまり、話をするときに自分がどのように思われるかばかりを考え、相手にわかりやすい伝え方とはどんなものか、しっかりと考えを巡らせていなかったのです。それどころか、難しい言葉を使って「この人はすごい人かもしれない!」と思ってもらいたい下心すら持っていたかもしれません。

ちょうど幼稚園の経営改革に乗り出した頃のことです。MBAを取得したばかりの私は、幼稚園の先生たちに向かって、意気揚々と「この幼稚園には差別化が必要なんです!」と宣言しました。その場の先生たちの、ポカンとした表情は今でも忘れられません。後から聞いた話では、「幼稚園が差別をしろなんて、あの人はなんて酷いことをいうんだろう」と、その場にいる全員が思っていたらしいのです。差別化とは、経営上の競争相手と違った特色を自社が打ち出す経営戦略の一つを指すのですが、話す相手に配慮をせず、独りよがりの言葉を使って話をしてしまったことは、今でも恥ずかしい思い出になっています。