「一段落してから再就職」が一番人気
ただ、今は多くの企業がこうした仕組みを変えていこうとしています。実際、結婚や出産で退職する女性は減っており、未婚女性を対象とした「理想とするライフコースの調査」(国立社会保障・人口問題研究所「結婚と出産に関する全国調査」)でも、仕事と家庭の「両立コース」(産休・育休後に復帰するライフコース)を希望する人が増えつつあり、32.3%を占めます(図表1)。
しかし最も人気が高いのは、一度退職して子育てが一段落してから再就職する「再就職コース」(34.6%)であり、結婚や出産を機に退職して家庭に入る「専業主婦コース」を選ぶ人(18.2%)も減ってはいません。
一方、理想ではなく「予定」のライフコースはどうでしょうか。こちらは両立コースと再就職コースがそれぞれ28.2%、31.9%となり、専業主婦コースは年々減少し2015年は7.5%にすぎません(図表2)。この中には「本当は専業主婦になりたいが、夫の収入だけでは食べていけないだろう」と、現実的な考えを持つ女性も多数含まれているように思います。
両立を目指す女性が増える一方で、専業主婦志向の女性が減らないのはなぜなのでしょうか。一時は「専業主婦=勝ち組」という風潮もありましたが、それは夫が高収入の場合のみ。サラリーマンの給与が下がり続けている現状では、優雅な主婦ライフを満喫できる人はほんの一握りにすぎません。
大黒柱の座を降りたい男たち
専業主婦志望の女性も、そうした現実はよくわかっているはずです。結局は日本全体に、男性に“一家の大黒柱”を求める雰囲気が根強く残っているためなのかもしれません。この風潮は、男性の幸福度にも影響している可能性があります。
幸福度の男女格差は、先進国の中で日本が一番大きく、女性が高く男性が低い状態にあります。原因については、私もこれから究明したいと思っていますが、今のところ、稼がなければならないというプレッシャーや、家庭内での孤立感が影響しているのではないかと考えています。
では、男性は妻にどんなライフコースを望んでいるのでしょうか。現在、彼らが望んでいるのは圧倒的に「再就職コース」と「両立コース」で、「専業主婦コース」は激減し2015年は10.1%です(図表3)。ここからは、自分だけで家族を養うのは大変だとわかっていて、大黒柱の座を降りたがっている様子がうかがえます。これも現実的な考え方と言えますが、問題は妻に家事も求めていることです。
男性も、家事をする気がまったくないわけではありません。実際、結婚前や直後には「共働きだから分担しなくては」と思っている人もたくさんいます。しかし、時がたつうちにやらなくなってしまうことがほとんど。この場合、仕事の忙しさを言い訳にすることが多いようです。