ギリギリの線を打ち出した

通算時間というこれまでの育休になかった概念を取り入れ、時間を捻出するためにテレワークを駆使するのは、苦肉の策にも映る。米国では極めて一般的なテレワーク。小泉氏が自宅で育児に専念すると言っても、働くことには変わらないとの指摘もある。

ただ、大臣がまとまった日数で連続して休むのは、まだまだ現実味を帯びていないのが実情だ。

通常国会が開会し、閣僚としての答弁が求められることを踏まえると、育休時間と実現に向けた手立てにおいて、世の中が許容するギリギリの線を打ち出したと言える。先月の記事(進次郎の育休が日本社会に大影響を及ぼすワケ)で書いたように、国会議員は育休法の対象外であることを巧妙に生かし、柔軟な運用を図ったかたちだ。

今や、パソコンと通信環境さえ整えれば、どこでも仕事ができる時代。閣僚への報告や打ち合わせ、役人による政策説明は顔を突き合わせなくても、外部への情報漏洩などの問題をクリアすれば、テレビ会議で十分可能だ。子どもの泣き声が聞こえる中、役人から自宅パソコンを通じて、レクチャーを受ける小泉氏の姿は想像するだけで、絵になるだろう。

進次郎が示した新しい育休スタイル

ITツールを万全に活用し、時短勤務も取り入れ、同僚でもできる仕事はどんどん任せるという新たな育休スタイルを提唱することで、国や会社の制度にのっとってまとまった日数を取る「育児休業」だけが育休との固定観念を打破し、いわば「育休改革」につながるのではないか。会社への迷惑などを理由に育休取得をためらう男性も、有休と時短勤務を組み合わせつつ、自宅で適度に働くということならば、心理的な抵抗が薄れ「プチ育休」に踏み切る可能性が高まる。たとえプチ育休でも、取らないよりは取ったほうがいい。

官民が実施している各調査によれば、男性の育休取得率低迷の理由で「取りやすい雰囲気が組織内にない」が最も多く、「育休中の給与面の不安」「パタハラに対する恐怖」などの回答が続く点でほぼ共通している。パタハラの中には、上司が出世への影響を言及したとの例もあるだろう。それを受け「自分がいなくなったら組織は回らない」と感じる人も相当いると見られる。今回、副大臣・政務官が大臣の代役を務めれば、組織は十分に回るケースを立証する場になる。一社員・一職員が不在となったところで、残された組織が機能しないはずがないのは言うまでもない。