年齢が上がるほどに遺伝の影響を強く受ける

能力、性格といった様々な形質は、親から受け継いだ「遺伝要因」と、生活や教育といった「環境要因」の両方の影響で決まります。重要になってくるのは、遺伝と環境がどのぐらいの比率で影響するのか、というところです。

双生児などを用いたこれまでの研究では、音楽の才能は約90%、スポーツの才能は約80%が遺伝の影響と報告しているものもあります。気になる頭の良さ、については、児童期が約40%遺伝の影響を受けるのに対し、成人期初期には約70%の影響を受けるという指摘があります。つまり年齢が上がるにつれ、遺伝的要因は強く現れやすくなるということです。

これは、子供のころのほうが、親の与える環境による影響を強く受ける一方、大人になるにつれて自分自身の遺伝的な素養にあった環境を自分で選んでいき、遺伝的な素質がより表に出やすい状況になるため、と解釈されています。

収入における遺伝の影響も年とともに強くなる

日本人の双生児約1000人を対象に、20~60歳の男性について、収入に対する遺伝の影響が年齢でどう変化するかを調べた研究があります。その中で、収入に対する遺伝の影響は20歳で22.7%。その後、30歳で38.2%、40歳で56.5%とどんどん上がり、43歳で58.7%とピークを迎えます。その後は、50歳で52.3%と下がっていきます。

普通に考えれば、双子といっても大人になるにつれ取り巻く環境は変わってくるので、収入も年齢に応じて遺伝の影響は少なくなる、と思いがちですが、現実は大きく異なるのです。つまり、新入社員にくらべ、30代、40代と年齢が上がるほどに、「仕事ができる・できない」が分かれてきて、そこには、遺伝的影響が現れている可能性が高いということなのでしょう。しかし、この研究結果は、男性に限るというのです。