続けられそうなことから始めてみる
「習慣トラッカー」を始めるとき、ぜひ盛り込んでもらいたいのが、「続けるハードルが低い項目」と「メリットがすぐに感じられる項目」です。
高野さんの例で言えば、「ベッドでスマホを見ない」は、充電器をベッドから遠い場所に置き、寝るときはスマホをそこに置いておくようにすれば、すぐに習慣化でき、持続します。また、「お風呂上がりのストレッチ」は短時間でも体が楽になり、確実に安眠効果が実感できるというメリットがあります。メリットがはっきり感じられる習慣は、とり組むためのモチベーションも途切れないので持続するわけです。
すると、「習慣トラッカー」のマス目にたくさんの「○」が並びます。毎日トラッカーに「○」を書き込むたび、「よし、続いているぞ!」と実感し、とり組めている自分に対して自信がもてるようになります。つまり、自己信頼感を回復させるにあたっては、「○」が続くことが重要なのです。
ですから、1ヵ月続けてみて「×」のほうが多かった項目に関しては、「習慣トラッカー」から外してしまってもかまいません。たとえば、「電話対応のマナー本を読んで、勉強する」に付いた「○」が月に5個くらいだとしても、努力できなかった自分を責める必要はありません。
その習慣はあなたが欲するものではなく、今、必要なとり組みでもなかったのです。求めていないから持続しないのだとしたら、手放してすっきりしてしまいましょう。
できたか、できていないか、結果がはっきりと目に見えるので、もう少しだけ続けてみるか、やめてしまうか、次の行動の判断がしやすいのも「習慣トラッカー」の特徴です。
「スモールステップの原理」が効果的に働く
「習慣トラッカー」が自己信頼感を回復させる仕組みは、心理学の世界で「スモールステップの原理」と呼ばれる力が働いているからです。
スモールステップの原理は、アメリカの心理学者バラス・スキナーが提唱したもので、達成したいゴールに向けて行うべきことを小さなステップに分け、1つずつ確実にこなすことで達成率が上昇するというものです。小さなステップをクリアするごとに、「よくできた」という報酬を受けとることができるのです。
なぜ、このスモールステップの原理が効果的かと言うと、人間の脳にやる気を出してもらうためには報酬系と呼ばれる脳の回路を満足させる必要があるからです。
報酬系を満たしやすい条件は、次の2つです。
●課題を達成したという成功体験を得ること
「習慣トラッカー」はこの2つを満たし、スモールステップの原理が働きます。その結果、「○」を書き記すたび、少しずつ自己信頼感が回復していくのです。