強い承認欲求には要注意

自己承認と他者承認の双方がバランスよく満たされる状態が理想的ですが、自尊感情が低下しているとき、私たちは自己承認がうまくできず、その代わりに他者承認を強く求めるようになります。つまり、「他人から認められたい」思いが強くなるのです。

佐藤さんの場合、それが「(価値のない私は)仕事くらい完璧にできないとここにいる意味がない」「良好な人間関係の中で完璧な仕事をする自分=価値がある」という思い込みにつながっていました。

それが「Wishリスト」を書くことによって自己認知が進み、自分自身の存在価値や仕事以外で得られる楽しみ、仕事そのものの喜びを再認識でき、他者承認が強くなりすぎていたこと、自己承認できる価値が自分にあることに気づくことができたのです。

忙しい人ほど自尊感情が下がりやすい

仕事に家事に忙殺されている人は、自尊感情が下がりやすい状況にいると言えます。忙しく日々を過ごすうち、自分を大切にすることを忘れてしまうからです。そんな人こそ、「Wishリスト」を試してみてください。

何の制限もかけず、思いつくままに書き進めていくうち、「自分はこんなこともしたかったんだ」「こういう場面で喜びを感じるんだ」「楽しみなことたくさんあるな」と、さまざまな感情が湧き出て、気持ちが解放されます。

中島輝『書くだけで人生が変わる 自己肯定感ノート』(SBクリエイティブ)

そして、リスト化されたWishを眺める時間が自分を大切にするひと時となり、自尊感情を高めてくれるのです。ですから、書き記した「Wishリスト」は書いて終わりではなく、毎日、ページを開いて見返すようにしましょう。

なんども見ることで、脳が重要なことだと認識し、「Wishリスト」に書かれているように行動しようと、勝手に動いてくれるようになるのです。

ある男性のクライアントさんは「Wishリスト」を大きな紙に拡大コピーして、毎日もち歩く手帳の間に挟み、ふとしたときに開いて眺めるようにしていました。

とくに出勤するのがしんどいと感じる月曜日の朝、リストを眺めるようにしたらメンタルが安定するようになったと言います。しかも、この習慣を始めるようになってから10ヵ月後に昇進、収入も増えるという副次効果もありました。

「Wishリスト」が効果的なのは、書き出したリストが本人の過去と未来をつなげ、見える化したTo Doリストになっていくからです。

「何のためにこんなに仕事が忙しいんだろう」「このままで大丈夫かな」と不安になったときも、リストを見ることで理想の未来に向かっていく自分をイメージすることができます。

「叶えたいことのために今、忙しく仕事をしている」「このままで大丈夫」と、そう思えたとき、あなたは自分に価値があると感じ、自尊感情が高まります。