「推しメン」をつくろう

以前、テレビ番組『アメトーーク!』(テレビ朝日系列)の「勉強大好き芸人」の回に僕が出演したとき、「推しメン」をつくって歴史を勉強するという方法を紹介しました。

「推しメン」をつくるという勉強法は、今でも活用しています。僕のYouTubeチャンネルで配信している歴史や現代の「偉人伝」は、まさにこの「推しメン」をつくることから生まれているコンテンツです。

「推しメン」という言葉を聞いたことがない人に簡単に説明すると、好きなアイドルグループの中で、特に大好きなメンバーを一人つくる、ということです。

アイドルグループの中に「推しメン」ができると、その推しメンをもっと知りたいと思うようになって、自然といろいろ調べるようになります。

そして、推しメンを中心に、仲の良いメンバーや同期のメンバーへの理解も進み、結果的に、アイドルグループ全体の理解が深まっていきます。

この原理を歴史の勉強に応用するのです。

歴史の登場人物をひたすら無機的に覚えるのは苦痛ですし、それでは頭にまったく残りません。

側室が40人、子どもが50人以上いた将軍

そこで、1つの時代の中で「この人が好きだ」という人をつくり、その人を中心としたストーリーで理解するようにします。

推しメンは、坂本龍馬のような誰もが知るスーパースターでなくてもかまいません。むしろ、スターの影にちょっと隠れているような人物を「推しメン」にするのが、個人的にはオススメです。

徳川将軍の中でいうと、僕の推しメンは11代将軍の徳川家斉です。

「えっ? ……家斉?」という反応をした人がほとんどではないでしょうか?

徳川将軍といえば、初代の家康や、3代将軍の家光、「生類憐みの令」で有名な5代将軍の綱吉、米将軍と呼ばれた8代将軍の吉宗、そして、徳川最後の将軍となった15代将軍の慶喜あたりが一般的には有名でしょう。

家斉は、一般的にはあまり知られていない将軍ですが、かなり特異なキャラクターです。政治的には松平定信によって寛政の改革が進められましたが、松平定信が退任すると、政治は緩み、幕府は少しずつ崩壊の道をたどるようになります。

家斉が何といっても面白いのは、側室が40 人もいたとされていることです。

しかも、なんと50人以上もの子どもをもうけているのです。たしかに将軍にとって跡継ぎ問題はとても重要ですが、それにしても、どうかしています(笑)。

家斉は将軍職を退いたのちも、大御所と称して権力を保ち、長期にわたって浪費を繰り返しました。

推しメンである家斉を起点にすると、その時代の退廃的な化政文化などにも興味がわいてきます。推しメンをつくる効果は、なかなか侮れないものがあります。

(中略)