結果にこだわる姿勢がキャリアを押し上げた

結果を出すためにシーチャウさんが重視したのは2つ。消費者ニーズをつかむためのマーケティングと、店頭で最もいい場所に並べてもらうための営業だ。例えば、ドラッグストアなどに新商品をプレゼンする際は、営業マン任せにせず、マーケティング担当のシーチャウさんも同行したという。

香港現地法人では業績のV字回復に成功(右から2番目がシーチャウさん)

シーチャウさんの熱のこもったプレゼンはストア側の共感を呼び、店内で最も売れやすい場所に置かれるようになった。さらに、受注数の多い営業マンに対してはインセンティブを用意し、組織内に「売りたい、売ってみせる」というムードをつくり出した。

「結果を出そうと思ったら、品質やマーケティングにこだわるだけでなく、組織を動かすことも必要だなと実感しました。それから組織づくりに興味を持ち始めて、チャンスがあればやってみたいと思うようになって。ちょうどその頃、ジョンソン・エンド・ジョンソンのマーケティング本部長にというお話をいただいたんです」

オファーがあった時、シーチャウさんは31歳。大企業の本部長といえば、普通は10~20年仕事経験のある人が就くポジションだ。最初は「本気で言っているのかな」と半信半疑だったそうだが、面接でじっくり話を聞いた末、自分を成長させるチャンスと考えてチャレンジを決めた。

そこから退職の日までは毎日泣いて暮らしたという。それほど会社が大好きになっていた。自分なりに結果を出すコツはつかんだし、周囲からも評価されている。人間関係もよくて居心地は最高。それなのになぜ転職するのか──。最終的に背中を押したのは、「このまま楽な環境にいたら成長できない」という思いだった。

2015年、ジョンソン・エンド・ジョンソンに入社。新しい職場は25人ほどのチームで、若い女性がいきなり本部長として赴任してきたのだから、反発を感じた人もいたに違いない。

そんな空気の中、シーチャウさんは「これからはアグレッシブに結果を求めに行く」と宣言。10年も横ばいが続いていた業績を伸ばすため、組織改革を開始した。