英語は“ここまでできたら完璧”という明確なゴールがないので、自分が納得のいくレベルまで到達するのは、見えない壁をよじ登るような感覚。しかも語学はあくまでツールであり、使いこなさないと意味がない。だから海外出張の際は、どんな形でもいいのでとにかくコミュニケーションをとるなど、貪欲に実践経験を重ねている。
「今さらネーティブスピーカーにはなれない。『帰国子女に育ててほしかった』なんて親を恨んでもしょうがないですから(笑)」
2019年42歳。まだまだ新しいことを吸収できる年齢だ。いつか英語でのカンファレンスで、スピーカーとして登壇できるくらいまでに成長したいという夢もある。好きなスピーチをスマホで繰り返し聞く、という学習法も実践中。
「TOEICで高得点を狙うより難しいかもしれませんが。私のような人間でもここまでこられた、という勇気を周囲に与えられたらうれしいです」
裸の王様にはなりたくない。周りの意見を大切に
マネックス証券は2019年で設立20年を迎え、会社は安定しているが、社長として安穏としてはいられない。
「経営書を読むことより、いろんな人と出会って見聞を広げていくほうが大事なのでは、と思っています」
先日、とある巨大グローバル企業の社長と会談したときのこと。「『これからはスピードが重要です。3倍速で意思決定をしていかなければ』と話すと、その社長に『“3倍”はよくいわれることです。ウチは4倍速でいきますよ』と言われ……(苦笑)。いろいろな山を越えてきた人は言うことが違う!と驚かされ、自分ももっと研鑽を積まねばと身が引き締まる思いでした」
社長就任後ツイッターで発信する機会も増えたが、これも見聞の広がりになっている。耳に痛い意見が届くこともあるが、どんな小さな指摘にも耳を傾けるのが清明流。裸の王様的な社長にはなりたくないから、とほほ笑む。
「一番大切にしているのは、“謙虚”であるということ。大勢の人に支えてもらって、今の私があるのです」
その感覚を忘れず、アクティブに社内外の人と関係を築いていくことで道が開けることは多い。「日々の出会いすべてが学び。コミュニケーション一つ一つを数珠つなぎにしていくことで、自分の世界が確実に豊かになっていくと信じています」
30代前半 中国語。中国語圏での旅をしたとき、中国人社員との交流で役立つ。
30代半ば 証券アナリストになるため基礎から知識まで体系的に学ぶ。ワインエキスパート。
41歳 英語。20代後半から現在まで英会話スクールで学ぶ。経営の勉強会に参加。
文=水島彩恵 撮影=平松唯加子
マネックスグループ株式会社取締役 代表執行役Co-CEO 兼 CFO。2001年大学卒業後、三和銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。06年にMKSパートナーズ(プライベート・エクイティ・ファンド)の参画を経て、09年2月にマネックス・ハンブレクト(17年にマネックス証券と統合)に入社し、11年に同社社長に就任。19年4月よりマネックス証券代表取締役社長。20年1月マネックスグループ代表執行役COO、21年1月よりCFO兼務。21年6月マネックスグループ取締役 代表執行役COO 兼 CFO、22年4月よりマネックスグループ取締役 代表執行役Co-CEO 兼 CFO。