スクールやオンライン、あらゆる方法を試す
マネックス証券の創始者・松本大前社長からバトンを受け継ぎ、その座に就いたのが清明祐子さん。大手ネット証券5社初の女性社長としても注目の人物だ。そんな彼女が「いくら学んでも終わりがない」と語るのが英語。本格的に勉強しようと決心したのは、マネックスグループの執行役員となり、グループ会社とのコミュニケーションや業務で英語に触れる機会が多くなってきたとき。このままでは意思伝達の大きな壁になると脅威を感じ、英語と真剣に向き合うことを決意した。
「英会話スクールに通い、オンライン英会話も受け、耳で聞いた英語を即座に復唱する“シャドーイング”が効果ありと聞けばトライ。あらゆる方法で英語を勉強しました」
マネックスグループでは株式などの金融商品はもちろん、暗号資産(仮想通貨)もグローバルで売るもの。グループ全体でどのように連携し収益を上げるかという局面では、当然英語のやり取りが発生する。
「相手の話す内容は理解できますし、日常会話はまあまあ問題なくできるのですが、ビジネスシーンで自分がリードしてディスカッションしたり、迅速に的を射た質問をしたり、さらに交渉まで英語で行えるレベルにまでもっていくのが難しい。だからいまだに英語がコンプレックスです」
英語は“ここまでできたら完璧”という明確なゴールがないので、自分が納得のいくレベルまで到達するのは、見えない壁をよじ登るような感覚。しかも語学はあくまでツールであり、使いこなさないと意味がない。だから海外出張の際は、どんな形でもいいのでとにかくコミュニケーションをとるなど、貪欲に実践経験を重ねている。
「今さらネーティブスピーカーにはなれない。『帰国子女に育ててほしかった』なんて親を恨んでもしょうがないですから(笑)」
2019年42歳。まだまだ新しいことを吸収できる年齢だ。いつか英語でのカンファレンスで、スピーカーとして登壇できるくらいまでに成長したいという夢もある。好きなスピーチをスマホで繰り返し聞く、という学習法も実践中。
「TOEICで高得点を狙うより難しいかもしれませんが。私のような人間でもここまでこられた、という勇気を周囲に与えられたらうれしいです」
裸の王様にはなりたくない。周りの意見を大切に
マネックス証券は2019年で設立20年を迎え、会社は安定しているが、社長として安穏としてはいられない。
「経営書を読むことより、いろんな人と出会って見聞を広げていくほうが大事なのでは、と思っています」
先日、とある巨大グローバル企業の社長と会談したときのこと。「『これからはスピードが重要です。3倍速で意思決定をしていかなければ』と話すと、その社長に『“3倍”はよくいわれることです。ウチは4倍速でいきますよ』と言われ……(苦笑)。いろいろな山を越えてきた人は言うことが違う!と驚かされ、自分ももっと研鑽を積まねばと身が引き締まる思いでした」
社長就任後ツイッターで発信する機会も増えたが、これも見聞の広がりになっている。耳に痛い意見が届くこともあるが、どんな小さな指摘にも耳を傾けるのが清明流。裸の王様的な社長にはなりたくないから、とほほ笑む。
「一番大切にしているのは、“謙虚”であるということ。大勢の人に支えてもらって、今の私があるのです」
その感覚を忘れず、アクティブに社内外の人と関係を築いていくことで道が開けることは多い。「日々の出会いすべてが学び。コミュニケーション一つ一つを数珠つなぎにしていくことで、自分の世界が確実に豊かになっていくと信じています」
30代前半 中国語。中国語圏での旅をしたとき、中国人社員との交流で役立つ。
30代半ば 証券アナリストになるため基礎から知識まで体系的に学ぶ。ワインエキスパート。
41歳 英語。20代後半から現在まで英会話スクールで学ぶ。経営の勉強会に参加。