友達とお茶をしながら政治の議論

フランスでの生活は、苦しいこともあった半面、学ぶことの喜びも味わった。特に生活の延長線上にアートがあり、映画があり、哲学があるという環境は今のマニヤンさんの血となり肉となっている。「職場でも、友達と食事やお茶をしている最中でも、アートや映画について語っていたかと思えば、そのうち政治や歴史について議論になったり。ごく自然に生活のすぐそばに“学び”があって、ほかの人と共有する。こういう暮らしは、人生をより豊かに、幸せなものにしてくれると気づきました」

注目した新聞記事はノートに貼り、自分なりの分析結果を書く。会社の将来のビジョンを、色鉛筆を使ってイメージで表したりも。休日は家にこもり、朝から晩まで本を読み、ノートにあれこれ書き留めるのが至福の時間だ。(撮影=神ノ川智早)

日本人は公私混同を避けがちだが、フランス人には、仕事も学びもすべて普段の生活に包含される“公私融合”の考え方がある。「コンシェルジュサービスも公私融合が基本で、フランスでは大企業の半数以上が導入しています。私生活が充実すると仕事に集中できて生産性が上がり、子育て中でも辞めないで長く働ける。企業にもメリットが大きいのです」

顧客のプライベートな手続きの代行、育児や介護などの心配事から解放するサービス以外に、常駐する企業内で、交流や学びなど新しいコミュニケーションの場も提供。仕事や生活の中で多くの人と交流しながら学ぶという、フランスでの経験が生きている。サービスの大きな意義は、単なる情報の提供ではなく、顧客に“幸せの選択肢”をプラスすること。

マニヤンさんにとっては“今、この瞬間”が大切。「常に“あなたは生き急いでいる”と言われます(笑)。でも、寿命が70歳でも100歳でも、生きることへの情熱は一緒。多分同じように、幸せと好奇心を追い求めていくと思います」